相互の情熱的な愛は,自我の堅い壁を打ち壊し,二人が一つに解けあった新しい人格を産み出す。自然は,人間が孤独でいるようには作っていない。人間は,もう一人(異性など)の支援なしには,自然の生物学的な目的を果たすことができないからである。そうして,文明人は,愛なくしては,自らの性本能を完全に満足させることができない。肉体的(身体的)だけでなく,精神的な,人間の全存在が男女の関係の中に入っていかない限り,この本能は完全には満足されないのである。
Passionate mutual love while it lasts puts an end to this feeling ; it breaks down the hard walls of the ego, producing a new being composed of two in one. Nature did not construct human beings to stand alone, since they cannot fulfil her biological purpose except with the help of another ; and civilized people cannot fully satisfy their sexual instinct without love. The instinct is not completely satisfied unless a man's whole being, mental quite as much as.physical, enters into the relation.
情報源: Bertrand Russell :Marriage and Morals, 1929
詳細情報:https://russell-j.com/beginner/MM09-050.HTM
<寸言>
「自我の固い殻」は簡単には壊れない。いや、反抗期前の子供の頃は「自我の固い殻」はない。反抗期以降、「自我の固い殻」は形成し始める。恋愛などによって「自我の固い殻」は壊れる。しかし、その殻は固くなるばかりで、老年の頃には最高潮に達する人もいる。