刑務所(Brixton Prison)は多くの面で非常に快適であることがわかった。用事は何もなく,決定をしなければならない難しい問題もなく,来客の心配もなく,また,仕事をじゃまされることもなかった。私は大量の本を読んだ。また,『数学の原理』(注:Principia Mathematica ではなく,The Principles of Mathematics であることに注意)の半ば一般向きの本である『数理哲学入門』)を書き上げ,また,『精神の分析』(The Analysis of Mind)の執筆にとりかかった。
I found prison in many ways quite agreeable. I had no engagements, no difficult decisions to make, no fear of callers, no interruptions to my work. I read enormously; I wrote a book, Introduction to Mathematical Philosophy, a semi-popular version of The Principles of Mathematics, and began the work for Analysis of Mind.
出典: The Autobiography of Bertrand Russell, v.2 chap. 1:The First War, 1968.]
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/AB21-270.HTM
<寸言>
監獄で著書の執筆などできるのかと不審に思われるかもしれない。ラッセルは第一次世界大戦に反対して運動をしたために逮捕された政治犯・思想犯であり、刑務所の外部に平和運動のための文書などをださない限り、刑務所内での自由は大幅に認められていた。また、兄(第2代ラッセル伯)の英国政府への働きかけのおかげで、室料を払う必要があるが,刑務所の第一部門に入れてもらえた。
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