三浦俊彦による書評

★多田洋介『行動経済学入門』(日本経済新聞社)

* 出典:『読売新聞』2004年4月11日掲載


 小柴・田中ダブル受賞に日本が沸いた一昨年のノーベル賞、世界の学界を最も驚かせた受賞者は、ダニエル・カーネマンだろう。経済学賞が心理学者に与えられたのだ。
 個人を合理的な主体と見なし数学モデル作りに徹してきた経済学が、人間の感情や直観を考慮に入れ始めた。この新展開「行動経済学」を、カーネマンの業績を軸に解説した本書は、上質な論理パズル本かつ社会批評として読めるだろう。非論理的な錯覚の例を多数分析しつつ、そうした人間の愚かさこそが金融マーケットを現実に動かしていく仕組みが鮮やかに描かれる。
 むろん、人間の心とその社会的作用が「どうあるか」を重視するだけでは「どうあるべきか」はわからない。後者の問題に取り組む標準経済学を主役と認め、理論からのズレを補正する脇役を行動経済学に期待していく本書の控え目な筆致が、この新学問の華々しい革新性をかえって見やすくしている。
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