三浦俊彦による書評

★ ロナルド・ワイツァー編『セックス・フォー・セール』(ポット出版)

* 出典:『読売新聞』2004年10月24日掲載



あるいは アマゾンで購入
 売買春はいけないこととされているが、成人の自由意思による売買春が悪である理由をはっきり示せた論客は一人もいない。売春やセックス産業の善悪を論じる前に、あるがままの事実を知るのが先決だろう。
 そうした基礎固めにうってつけの、社会学者ら十九名による調査研究が本書。街娼からコールガールまで多様な売春婦の生活、警察の取締り、反対運動と支援団体の現状、薬物やHIVとの関係、客の動機の分析など。欧米の事例に限られているが、規制が厳しくおとり捜査も盛んなアメリカと、寛容なヨーロッパとの対比は興味深い。
 膨大なデータの収束点はやはり、セックスワーカーが甘んじてきた職業差別の是非だ。本書の情報を日本での論争に生かすには、本訳書の監修者松沢呉一が同じ出版社から出した『売る売らないはワタシが決める』を併読したい。この種の微妙な価値判断にこそ、現代倫理の核心が点っている。岸田美貴訳。

楽天アフィリエイトの成果(ポイント)は本ホームページのメンテナンス費用にあてさせていただきます。
 ご協力よろしくお願いいたします