三浦俊彦による書評

★ アンソニー・ウエストン『ここからはじまる倫理』(春秋社)

* 出典:『読売新聞』2004年8月22日掲載


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 ビジネスや議論に役立つ論理思考術(クリティカル・シンキング)がちょっとした流行りだ。本書はその倫理版である。
 善悪の判断も、基本は「論理」。理路整然と議論することが、日常道徳から世界平和にいたるすべての倫理観の基礎となる。しかし本書は、アカデミックな倫理学で前提される抽象化に待ったをかけ、論理より「創意工夫」や「想像力」をあえて強調した。独力で一から実感してゆくためのマニュアルにこれだけ徹した本も珍しい。
 倫理学を学んだことのない読者は、本書の勧告の大半に「そりゃ当り前」という感じを抱くだろう。学問以前の教養を平易な言葉でリンク付けしてゆくこの流れが物足りないと思ったら、各章末に紹介されている倫理本を少し読んでから本書を再読してみては。そして補論「倫理のレポートを書く方法」に従って実際に書いてみては。きっと「創意工夫」の真意が見えてくるはずだ。野矢茂樹他訳。

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