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日本科学哲学会 第36回(2003年)大会 開催日: 11月15日(土)・16日(日) 会 場: 千葉工業大学 津田沼キャンパス ・11月16日(日) ワークショップ(10:00-12:15) <A会場> I.「ラムジー生誕100年を記念して」 オーガナイザ:伊藤邦武(京都大学) 提題者:出口康夫(京都大学)、橋本康二(筑波大学)、三浦俊彦(和洋女子大学) ▼「真理の余剰説」について 三浦俊彦 ■1 ラムジーが「真理の余剰説」を、他の真理論にとって代わるものとして提示していない以上、他の真理論とあえて対立する同レベルの真理論として「真理の余剰説」を理解しない方がとりあえず適切であろう。とくに、「真である」という述語は構文論的にも意味論的にも除去されるべきものと考えるのではなく、除去可能だが有意味な単位として、その自律的存在を認める説として「真理の余剰説」を解するべきであろう。 文(命題)にかかる「真である」という述語は、文(命題)から文(命題)を生成する演算子と見なすことができる。(後者の場合、対象言語とメタ言語の区別が必ずしもはっきりしなくなるが、T「P」とTPとに同義性を仮定することはできる。その仮定は真理の余剰説の論点先取にはならない)。 さて、「真である」という文演算子が、常に(直接話法で語そのものが問題となる場合を除いて)省略可能であること 条件o ∀P TP≡P これを真理の余剰説と考えよう(注1)。条件oは自明のように見えるが、TTP≡TPのような反復演算子の短縮とは違って、まがりなりにも文演算子の完全削除を認める強い主張なので、直接の正当化は難しい。頭ごなしの規約による以外に、条件oを認めるべき根拠はあるだろうか。とりわけ、他の演算子の作用範囲内に左辺もしくは右辺が入った場合も条件oが成立するべきなのかどうかは、慎重に見極めねばなるまい。そこで、自明視されがちな条件oを、Tの省略可能性を主張しない条件へと分解してみよう。 条件oが成り立つためには、次の二つの条件が満たされる必要がある。 条件a ∀P∀Q∀※ T(※P)≡※(TP) 条件b ∀P∀Q∀※ T(P※Q)≡TP※TQ (注2) 逆に、aとbがともに成り立つためには、oが必要である。なぜならば、 aの※にQ☆を代入すれば T(Q☆P)≡Q☆TP ∧ T(Q☆P)≡TQ☆TP ゆえ Q☆TP≡TQ☆TP ∀P∀Q∀☆についてこれが成り立つから、 Q≡TQ が必要である。 こうして、oの必要十分条件は、aかつbである。単純であるがゆえに却って日常言語でも理論的言語でも正否を検証しづらいoに比べ、その必要十分条件である条件a+bは、理論的言語にしばしば現われるため、その成否の条件を検討しやすいはずである。 さて、条件a,bにはそれぞれ、一見反例と思われるようなケースがある。 順に吟味しよう。 ★条件aの反例 様相演算子が関わる場合、条件aが成り立たないように見える場合がある。端的に、真理様相の必然演算子□をとろう。 T(□P)≡□(TP) ここで、Tを常識的な読み「現実に成り立つ」つまり「現実世界で真である」とする。「……は真である」とは、「現実に……」という意味に他ならないだろうから。 ここで、現実世界の名を@とする。すると、 in@(□P)≡□(in@P) は、一般に成り立たない。左辺は、Pが@からアクセス可能なあらゆる可能世界で真である場合にのみ真であるが、右辺は、Pが@において真でありさえすれば真となるからである。 これは、条件aへの反例となるだろうか? Tを@という固有名によって解釈したことにより、@を含む全体領域の中のある特定領域内真理へとTが相対化されていることに注意したい。つまり、本来のTに、べつの演算子「@において」が付加されていると見ることができる。そのような不純物は、つねに、濾過することができる。つまり、演算子を分解して、 in@(□P) を、 in@'(T(□P)) へ、 □(in@P) を、 □(in@'(TP)) へ、 分析することができる。こうして析出された不純成分in@'がaへの反例めいた現象を起こしていたのであって、濾過後に残ったTは、もはやaの反例を作らない。なぜならば、まだaの反例と見える場合には、何度でも濾過を繰り返して T(□P)≡□(TP) を得ることができるからである。 この濾過手続きは、□とin@のペアに限らずあらゆる演算子の組み合わせについても有効なので、条件aは普遍的に成り立つ。 気が済むまで濾過を繰り返せるというこのことは、規約によって条件aを認めているということとは違う。濾過で分離された不純物には、常にTならざる成分を同定し既成の語で名づけうるだろうからだ。 つまり、規約によらずとも、条件aへの反例は考えられないのである。 こうして、条件aは、「真理演算子は相対的な真理を表わす演算子(他の演算子の修飾を受けた複合的真理演算子)ではなく、真であることそのものだけを表わす単純な演算子として理解せよ」という指令に他ならない。 ★条件bの反例 条件bについても類似の事情が観察される。 条件bが破られる有力候補としては、排中律(正確には、排中律と二値性原理の互換性)の成り立たない場合 T(A∨~A)≡(TA∨T~A) が成立しない場合 が考えられる。たとえば、次の問い ・神は存在するだろうか? ・人類は太陽系外に植民するだろうか? ・ハムレットの血液型はA型だろうか? ・地球外文明はあるだろうか? ・πの小数展開に7が10回連続することがあるか? について、T(A∨~A)は成り立っても、TA∨T~A は成り立たない、とする立場がありうる。不可知論、非決定論、非実在論、実証主義、(直観主義?)の場合である。そこでは、条件bが破られている。 しかしこれらは、例外なく、ラムジー・テストに服する諸状況である。ラムジー・テスト的状況の場合、一般に、T(A∨~A)、TA∨T~AのTは、コンテクストを作る「人知において」「西暦2003年現在に決まっていることとして」「物語の中で」「科学的に証明できることとして」「数学的知識において」といった大きな演算子が全体にかかっている。つまり、 B□→(A∨~A) は真だが、 (B□→A)∨(B□→~A) は偽である と考えられている。 これは、条件bを破っているのだろうか? B□→を※と書いて考えると、 T(※(A∨~A)) から T((※A)∨(※~A)) が常に導かれるためには、 ※(A∨~A) から ※A∨※~A が導かれる必要がある。 ※が相対的真理の演算子である場合は必ずしも導かれそうにないが、これは、Tとは関係のない論理である。 ※を濾過して、B□→がTそのものとなった場合(コンテクストの限定なしに、「もし真実のとおりであるならば」といった一般的な前件の場合)はどうだろうか? T(T(A∨~A)) から T((TA)∨(T~A)) が常に導かれるためには、 T(A∨~A) から TA∨T~A が導かれる必要がある。 これは、条件bの一例である。 反例らしきものは、単に、条件bが∨に関して自己肯定的であることを示すにすぎない。 以上のことは、∨以外の演算子についても言えることは明らかである(また、Aと~A以外のペアについても言えることは明らかである)。 以上で、条件a、bについて、反例は濾過によって除去できることが示された。 条件aに関してはさらに、反駁不可能であることが示されたと言ってよい。 次節で、残る条件bをさらに積極的に支持し、第3節では、その補強的議論にともなって生ずる反例――濾過によっては処理できないと思われる反例――を考察しよう。 ■2 真理の余剰説を反駁するかに見える相対的真理やラムジー・テスト的状況において、演算子が単純な意味での「真である」の場合、実は余剰説に反していないことを確認した。ここで、真理の余剰説の必要十分条件である条件a+条件bを、積極的に擁護してみたい。 条件bについて、前節の濾過の戦略ではさばききれない反例がありうると思われる。その反例は第3節で具体的に検討することとするが、その準備の便宜上、真理の複雑さを示すような例、たとえば学際的な多種多様の前提を含む論証の例を見ておきたい。anthropic reasoningの一形態である simulation argument の変種を考えよう。 「あなたが生物学的な意識であるならば(コンピュータ・シミュレーションで作られた意識でないならば)、地球外文明は存在しない」 (SETIは汎虚構主義を含意する) この論証には、多数の補助前提が隠されている。それらを明示すると、 (1) 超文明に至る前に文明は確実に滅びてしまうわけではない。 (2) 超文明は、コンピュータ・シミュレーションによって、あなたの心と同程度にクリアな意識を作り出すことができる。 (3) 超文明は、あなたの心と同程度にクリアな意識シミュレーションを作り出そうとする。 (4) 生物学的意識よりも、シミュレーション意識の方が低コストで増殖しやすい。 (5) あなたは、生物学的な意識である。 結論 地球外文明は存在しない。 T(1)∧T(2)∧T(3)∧T(4)∧T(5)□→T(反SETI) というこの論証を拒否するためには(SETIの予算を取りたい科学者なら)、さしあたり、T(1)∧T(2)∧T(3)∧T(4)∧T(5)の連言肢のいずれかを拒否する手が考えられる。 終末論∨反計算主義∨反技術的収斂∨反情報理論∨汎虚構主義(or独我論?) こうして、 ~T(1)∨~T(2)∨~T(3)∨~T(4)∨~T(5) が主張される。条件aには問題はないとすでにわかっているので、これは、 T~(1)∨T~(2)∨T~(3)∨T~(4)∨T~(5) と同じことである。 さて、補助前提というものは、いくらでも分割できるものだ。確率的に信憑性ある論証のためには、たとえば次のような前提がさらに必要とされる。 (6) 起こりうること(起こりやすいこと)は、必ず起こる。(充実の原理) (7) 実現可能な目的が意図されると、しばしば、成就する。(行為の原則) (8) あなたは、場所的・性質的に、例外的な意識ではない。(平凡の原理) (9) 地球文明は、時間的・性質的に、例外的な文明ではない。(平凡の原理) (10) あなたは、地球文明の一員である。(経験的事実) (11) 地球文明は、超文明の手前にある文明である。(経験的事実) (12) この論証の語はすべて正常な意味で使われている。(語用論的原則) ‥‥‥‥‥ (6)は、(1)や(4)の中に暗黙に含まれていたことであり、(7)は(2)(3)に、(8)(9)(10)(11)は(5)に、(12)はすべてに(あえて言えば結論に)含まれていたと見ることができるだろう。 すなわち、 T~(1) は実は T~(1')∨T~(6) T~(3) は実は T~(3')∨T~(7) T~(4) は実は T~(4')∨T~(6) T~(5) は実は T~(5')∨T~(8)∨T~(10)∨T~(11) 結論 は実は T(地球外文明は存在しない)∨T~ (12) へと分解できる。 このことは、論証の前提・結論になりうるあらゆる文にあてはまる。一般に、いかなる文にも明示されない補助前提が含まれている以上、任意の文について、 P ≡ Q∨R という形へ分解することができる。(Q∧RでもQ⊃Rでも同様) PはもともとQ∨Rだったのだから、もともとはTPとされていた主張は、実はT(Q∨R)という主張だったことになる。ここで、補助前提が明示化されておのおのが独立した前提として扱われたとたんに、 TQ∨TR という主張が成立する。 Q、Rも同様にして分解して演算子Tを分配することができ、以下同様である。 このとき、主張内容の実質的変更は行なわれていない。こうして、私たちは、 T(Q∨R)≡TQ∨TR を暗黙に認めていたのでなければならない。 ∨だけでなく、~、∧、⊃、□→等々、他のあらゆる文結合子を使って文を任意に分解することができる(注3)ので、任意の結合子※についてTの分配法則は成り立つ。前提の任意の分割可能性という語用論が、条件bを自ずと証明しているのである。 こうして、条件a+b(真理の余剰説)は、反駁不可能である。 真理の余剰説は、やはり、反駁不可能なのである。 しかし…… ■3 語用論的に見た「真理の余剰説」 すでに示したように、真理の余剰説は論理的真理とも言ってよい原理なので、「対応説」「整合説」「プラグマティズム」などの真理の諸理論と同列に扱うのは誤りである。 では、真理の余剰説は、真理について何を具体的に教えてくれるのだろうか? 前節の、Tの分配例 T~(1) ≡ T~(1')∨T~(6) T~(3) ≡ T~(3')∨T~(7) T~(4) ≡ T~(4')∨T~(6) T~(5) ≡ T~(5')∨T~(8)∨T~(10)∨T~(11) T(結論) ≡ T(地球外文明は存在しない)∨T~ (12) を見直していただきたい。 T~(1')∨T~(6)で、 ~(1')は~(1)の述べ直しであるからほとんど同じ言葉で表記される「超文明に至る前に文明は確実に滅びる」という、一般的事実を表現する文である。一方、~(6)は、充実の原理の否定という、一段階抽象度・一般化の高い文である。つまり、タイプが異なっている。 ~(3')と~(7)、~(4')と~(6)についても同じことが言えよう。~(5')と~(8)となるとタイプのかけ離れ方がさらに著しく、~(5')、~(10)、~(11)はあなたおよび地球文明に関する個別的な事実を述べた文、~(8)は平凡の原理の否定というふうに、一般化の度合のまったく異なる組み合わせである。 T(地球外文明は存在しない)とT~ (12)はさらにもっと異質性が顕著であって、宇宙生物学的主張と、この論証についての自己言及的な語用論的主張である。 ~(1')、~(3')のような事実の一般化や~(5')、~(10)、~(11)のような個別命題は、一見して、真理の対応説によって説明すべき真理であろうし、~(6)や~(7)のような「原理」は、むしろ整合説かプラグマティズムによって説明すべきであり、~(12)にしても、もし真だとすればプラグマティズムによって(あるいは論証の規約、ルールによって)理解されるべき真理であろう。これらの全く種類の異なった真理を同列に扱う真理の余剰説には、異議が出ても不思議でないかもしれない。 つまり、T(地球外文明は存在しない)∨T~(12)というのは、選言肢がそれぞれの真理演算子の作用範囲内に入っているかぎりは問題ないにしても、T(地球外文明は存在しない∨~(12))のように単一の真理演算子の作用範囲内に入ることはできない、という異議だ。両命題それぞれを真にする真理概念は存在するにしても、両方ともを真にする真理概念はないかもしれないのだ。このとき確かに条件bは破れている。 そうした潜在的異議に対しては、まずは次のような防御策が思いつかれるであろう。 α 性質の異なる真理は、単一の真理演算子の作用範囲内に束縛してはならない。 αに従えば、充実の原理や平凡の原理のようなメタ理論や、語用論的原則のようなさらに根本的な前提は、別個の前提として区分けしておくことになる。T(地球外文明は存在しない∨~(12))はまずいので、~(12)はレベルの違う他の命題から切り出してくるのではなく、始めから別個に独立させて明言しておくか、同種の真理の中から切り出してこなければならないということだ。しかし、そのとき、真理の種類の異なる諸前提が合わさって結論をいかにして導くことができるのか、謎が残ってしまう。 けっきょくのところ、性質の異なる真理演算子が混在しているかぎり、αに従いつづけることは不可能である。そうしてみると、次のような指令が浮上してくる。 β 性質の異なる真理演算子を用いてはならない。 βは、真理の意味を一つに限定せよ、という指令である。対応説か、整合説か、プラグマティズムか、あるいはその他の新理論か、ともあれ複数の真理演算子を(少なくともあるひとまとまりの談話内では)混用してはならないのである。βによると、T(地球外文明は存在しない∨~(12))のみならず、T(地球外文明は存在しない)∨T~(12)も許されない。 一見、別個の真理論で説明されるように思われた(1)~(12)および結論は、すべて、同一の真理論で説明されるべきだというわけである。これは妥当な指令というべきだろう。真理の種類の異なる諸前提が合わさったとき結論をいかにして導けるのかもともと謎であったからである。 異なった意味で同一語句を使用してはならない、というのは、「真理」に限らず、あらゆる語について言えることだろう。つまるところ、真理の余剰説というのは、「異なった真理概念を混用するべからず」というごく常識的な指令であった。 真理の余剰説は、対応説、整合説、プラグマティズムなどと競合する同レベルの真理論ではないことがこうして確認される。真理の余剰説は、 A. どの真理論も持たねばならない構造(条件o)を述べ、 B. 第1節で見たように、真理演算子と相対的真理演算子とを区別し、 C. 真理論の統一を命ずる(原則β)、 という三つの仕事をなすメタ真理論であると言うべきであろう(注4)。 注1 実際は、「TPはPに他ならない」という形で、TPとPの単なる双条件関係でなく同義性を主張するのが真理の余剰説であろうから、条件oは真理の余剰説の最低条件を述べたものにすぎない。本来は以下、≡を一律に、同義性を表わす演算子と読むべきである。 注2 ※は任意の演算子を表わすとする。 ただし条件bは、 ∀P∀Q(T(P∨Q)≡TP∨TQ) のような具体例でも十分かもしれない。 注3 実はこれは熟考の余地がある。注2の推測が正しければ、このことに煩わされる必要はない。 注4 C.は、弱い意味と強い意味との二通りに解釈できる。互いに干渉しない別個の談話において、互いに異なった真理概念を前提しているということを許すか許さないかである。事実上、どの二つの談話が互いに干渉しあわないかをアプリオリに決定することができない以上、強い意味でのC.を遵守するしかないと思われる。 ●以下は、ワークショップ会場で三浦に質問をされた駒澤大学非常勤講師鈴木聡氏との、電子メールによる討論である。 2003年11月27日 11:13 三浦 さん こんにちは。 駒澤大学の鈴木聡です。 ちょっと遅れましたが、例の論文に関するコメントを 送ります。 それは次のようになります。 まず、条件bは、 条件b’ T(P∨Q)≡(TP∨TQ) としておきましょう。 さて、条件aの対象領域にQ∨のようなill-formedな 表現が含まれているとすれば、∨Qのような表現も当然 含まれてることになるでしょう。 このとき、 T(∨QP)≡(∨QTP) という変なものが成り立ってしまう。 そういうわけで、条件aを、 条件a’ T(P∨Q)≡(Q∨TP) としておきましょう。 (条件a’は弱すぎるかもしれませんが・・・) これらの条件の下で、次のような意味論をとりましょう。 表現αに対して、それに対応する可能世界の集合≪α≫を その意味論的値としましょう。 例えば、≪T≫を任意の論理式に対して、 可能世界全体の集合*を付値する関数としましょう。 このとき、 ≪T(Q∨P)≫=≪Q∨TP≫=*、 ≪T(Q∨P)≫=≪TQ∨TP≫=*、 (≪Q∨TP≫=≪TQ∨TP≫=*、) となりますが、 条件oの対応物 ≪Q≫=≪TQ≫=* が成り立つ必要はないでしょう。 したがって、 条件a(a’)および条件b(b’)ならば、 条件oということは成り立たないでしょう。 以上のようになります。 参考にして下さい。 では、また。 駒澤大学非常勤講師 鈴木 聡 ▲ 2003年11月28日 1:04 鈴木聡 様 三浦俊彦 コメントどうもありがとうございました。 ただ、多少意味のわからないところがありましたので……、 まず、次のところがわからなかった。 > さて、条件aの対象領域にQ∨のようなill-formedな > 表現が含まれているとすれば、∨Qのような表現も当然 > 含まれてることになるでしょう。 > このとき、 > T(∨QP)≡(∨QTP) > という変なものが成り立ってしまう。 > そういうわけで、条件aを、 > 条件a’ T(P∨Q)≡(Q∨TP) > としておきましょう。 「Q∨のようなill-formedな」とありますが、条件aの演算子※は任意なので、 任意の命題Qに対応した「Qまたは」という演算子をとることが可能ですよね。 ※として ∨Q をとるならば、T(∨QP)≡(∨QTP)ではなく、 T(P∨Q)≡(TP)∨Q という文型が得られると当然考えるべきでしょう。 また、最後近くの、 > 条件oの対応物 ≪Q≫=≪TQ≫=* > が成り立つ必要はないでしょう。 もわかりませんでした。条件oは、 単に、≪Q≫=≪TQ≫ と言っているだけです。 条件oが成り立つ必要はないというのは、そのとき条件oが偽だという意味なので しょうか。なぜ偽なのか、理解できませんでした。勘違いしているかもしれませんの で、間違いがありましたらご指摘ください。 ちなみに、学会で配布したものとは別の「証明」を書いておきます。 間違いがありましたらぜひまたコメントください。 条件o P≡TP 条件a T(※Q)≡※(TQ) 条件b T(P※Q)≡TP※TQ 条件o P≡TP が必ずしも成り立たないと仮定する。 条件oが成り立たない特定の文を pと書こう。つまり、 p≡Tp は成り立たない。 ◎を恒偽文とし、 条件aの特殊例 T(p∨◎)≡p∨(T◎) 条件bの特殊例 T(p∨◎)≡Tp∨T◎ から、条件aと条件bがともに成り立つためには p∨(T◎)≡Tp∨T◎ が必要。 ここで、p∨(T◎)≡p Tp∨T◎≡Tp ところが、仮定により p≡Tp が成り立たないので、 p∨(T◎)≡Tp∨T◎ が成り立たない。 これは、両条件の特殊例がともに成り立つことはないことを意味する。 もともとの一般的な条件a、条件bがともに成り立つことは尚更ありえない。 つまり、条件oを否定すると、条件a,bがともに成り立つことができない。 対偶をとると…… 条件a,bがともに成り立つならば、条件oは成り立つ。 つまり、条件oは、条件a+bのための必要条件である。 証明終わり ▲ 2003年12月3日 19:06 三浦さん 鈴木聡@駒澤です。 返事が遅くなり、すみません。 以下のようにして、 この別の証明の 「p≡Tp が成り立たないので、 p∨(T◎)≡Tp∨T◎ が成り立たない」 という部分への反例を構成します。 任意の表現 A に対して、 ≪A≫をその意味論的値とします。 それぞれの基本的な文に対する (メタ水準?での)真理条件が 与えられているとします (普通のモデル理論的に考えてください)。 例えば、 ≪T≫を任意の表現に対して、 可能世界(アトム)全体の集合*を付値する 「定値」関数とします。 ◎が恒偽文でも、 ≪T◎≫=* です。 ここで、 ≪p≫≠≪Tp≫と仮定します。 (つまり、≪p≫が可能世界全体の集合 よりも小さいと仮定します。) 上述のように、 ≪T≫は 任意の表現に対して、 可能世界全体の集合*を付値する 定値関数ですから、 ≪p∨T◎≫=*、 ≪Tp∨T◎≫=* が成り立ち、 ≪p∨T◎≫=≪Tp∨T◎≫ が成り立ってしまう。 この反例の構成の仕方は、 前の証明への反例の構成の仕方 と同じものです。 ご検討ください。 では、また。 ▲ 2003年12月4日 4:08 鈴木聡 様 三浦俊彦 ふたたびコメントありがとうございます。 言われる趣旨はよく理解できました。 ただ、誤解があるようです。 Tは変項ではなく、「真である」という定項であることにご注意ください。 Tは変項ではないので、 > 例えば、 > ≪T≫を任意の表現に対して、 > 可能世界(アトム)全体の集合*を付値する > 「定値」関数とします。 > ◎が恒偽文でも、 > ≪T◎≫=* です。 というやり方は不適切です。 演算子「真である」の解釈として定値関数をとるというのは認められないでしょ う。真理の余剰説は、あくまで通常の「真である」について論じているのだからで す。 つまり、≪T◎≫=空集合、 一般に偽なる文AについてはTAは偽となるのが当然だからです(念のため、これ は真理の余剰説の論点先取ではありません)。 条件oと条件a,bとの間の必要十分条件の関係は、任意の演算子Tについて成り 立つと私は述べたわけではなく、「真である」という特定の演算子Tについて成り立 つと私は主張しているわけです。 拙論が、任意の演算子Tについての必要十分条件を提示したと解すれば鈴木さんの 批判があてはまりますが、あくまで「真理の余剰説」とは何か、を論ずるために、条 件oを条件a,bに分析し、その含意を検討したのが拙論であるとご理解ください。 まだ間違いがありましたら、どうぞ御指摘いただければ幸いです。 2003年12月4日 4:59 鈴木聡 様 先ほどの続きです。 (本質的には先のメールで言い尽くしてますが、重要なことなので以下、蛇足気味に) 証明の次の変形バージョンを考えます。 条件o P≡TP 条件a T(※Q)≡※(TQ) 条件b T(P※Q)≡TP※TQ 条件o P≡TP が必ずしも成り立たないと仮定する。 条件oが成り立たない特定の文を pと書こう。つまり、 p≡Tp は成り立たない。 ◎を恒真文とし、 条件aの特殊例 T(p∧◎)≡p∧(T◎) 条件bの特殊例 T(p∧◎)≡Tp∧T◎ から、条件aと条件bがともに成り立つためには p∧(T◎)≡Tp∧T◎ が必要。 ここで、p∧(T◎)≡p Tp∧T◎≡Tp ところが、仮定により p≡Tp が成り立たないので、 p∧(T◎)≡Tp∧T◎ が成り立たない。 これは、両条件の特殊例がともに成り立つことはないことを意味する。 もともとの一般的な条件a、条件bがともに成り立つことは尚更ありえない。 つまり、条件oを否定すると、条件a,bがともに成り立つことができない。 対偶をとると…… 条件a,bがともに成り立つならば、条件oは成り立つ。 つまり、条件oは、条件a+bのための必要条件である。 証明終わり 証明を反駁するには、鈴木さんの方法を以下のように書き変えねばなりません。 > 例えば、 > ≪T≫を任意の表現に対して、 > 可能世界(アトム)の空集合*を付値する > 「定値」関数とします。 > ◎が恒真文でも、 > ≪T◎≫=* です。 > > ここで、 > ≪p≫≠≪Tp≫と仮定します。 > (つまり、≪p≫が空集合 > よりも大きいと仮定します。) > 上述のように、 > ≪T≫は > 任意の表現に対して、 > 空集合*を付値する > 定値関数ですから、 > ≪p∧T◎≫=*、 > ≪Tp∧T◎≫=* > が成り立ち、 > ≪p∧T◎≫=≪Tp∧T◎≫ > が成り立ってしまう。 つまり、Tの解釈を変えねばなりませんね。 これでは反例となっていません。 拙論のもともとの主張は、任意の演算子※について、というものでした。 それを 条件a…… p∨ 条件b…… ∨ という特殊例だけで十分かもしれない、と注1で注釈したわけですが、 条件a…… p∧ 条件b…… ∧ も加えて、この両者が同時に成り立つこと、というのを条件a,b(弱められた条 件a,b)と解すれば、どうなるのでしょう。 「真である」だけでなく、任意の演算子Tについても、条件oと条件a,bとは必 要十分条件、ということは成り立つのではないでしょうか。 上の二つだけで足りなければ、※が 条件a…… p⊃ 条件b…… ⊃ 条件a…… p≡ 条件b…… ≡ の場合(さらにはあらゆる真理関数の場合)をも同時に満たす、というふうに考え れば。 任意の演算子Tとした場合も、条件oと条件a,bは必要十分になるような気がし ますが。(むろん、真理の余剰説を論ずるためにはそこまで強いことを言わなくても よいのですが) ちょっと急いでしたためましたので、間違いがありましたら御指摘ください。 (私も考えてみます。ただし前述のようにこれは蛇足気味でした) ▲ 2003年12月10日 19:20 三浦さん 返事が遅くなって すみません。 鈴木@駒澤です。 Tの解釈を固定した上で、 条件o ⇔ 条件aかつ条件b を証明することについて述べます。 もしAが恒偽式であるとき、 ≪TA≫が空集合であるわけですよね。 おそらく、その立場からは、 もしAが恒真式であるとき、 ≪TA≫はアトム全体の集合となるわけですよね。 そうすると、おそらく、任意の表現Aに対して、 ≪TA≫=≪A≫という特性を満たす写像、つまり、 恒等写像が≪T≫であるということになるわけです。 まさしく、それは真であることの本質そのものです。 しかし、これは条件oそのものです。 そういうわけで、Tの解釈をこのように固定した上で、 条件o ⇔ 条件aかつ条件bを証明することは、 とりもなおさず、 条件o ⇔ 条件oかつ条件aかつ条件b を証明することになるわけです。 両辺に条件oが出現してしまっています。 これはいけません。 三浦さんのやりたいことは、おそらく、 写像が恒等写像であることの必要十分条件 を求めることなのでしょう。 ご検討ください。 では、また。 ▲ 2003年12月11日 4:13 鈴木聡 様 三浦俊彦 いつもちょっと返事が早すぎてすみませんね。 いや、ちゃんと時間かけて考えてますから。 さて、今回は、鈴木さんの通信に不明な点があります。 > もしAが恒偽式であるとき、 > ≪TA≫が空集合であるわけですよね。 > おそらく、その立場からは、 > もしAが恒真式であるとき、 > ≪TA≫はアトム全体の集合となるわけですよね。 > そうすると、おそらく、任意の表現Aに対して、 > ≪TA≫=≪A≫という特性を満たす写像、つまり、 > 恒等写像が≪T≫であるということになるわけです。 ↑「そうすると、おそらく」以下の3行がなぜ出てくるのか理解できません。 恒偽式はTで空集合へ、恒真式はTで全体集合へというのは、Tよりむしろ恒偽、 恒真の定義です。 つまり、証明の必要上、≪T◎≫=≪◎≫=*となる◎を選んできたわけですね。 ≪T◎≫=≪◎≫=*とまず仮定されているのです(そのような◎の存在は、真理の 余剰説を前提することなしに具体例を挙げることができます)。 このことは、任意の表現Aについては何も言っておりません。つまり、 ≪TA≫= ≪A≫などということは、私の証明において仮定されておりません。 ≪TA≫も≪A≫も、現実世界をメンバーとする集合かどうかについて一致しさえす ればよいのであって、他のメンバーは食い違っていてもよく、互いに別々の集合であ るかもしれません。 真理の余剰説を前提しないTの意味上、それが求められるすべてです。 Aが、証明に役立つ特定の命題◎である場合のみ、≪TA≫=≪A≫が仮定されま す。この仮定には論点先取はありません。 Tの解釈を、恒偽文、恒真文について固定しているだけです。他の命題については オープンです。 「条件o ⇔ 条件aかつ条件b」は、右辺に条件oを予め加えることなく、証明さ れております。 いかがでしょうか。間違っていましたら御指摘よろしくお願いします。 ▲ 2003年12月17日 18:28 三浦さん 鈴木@駒澤です。 返事が遅くなって、 すみません。 ◎を恒真式としたとき、 もし◎≡T(◎)を前提してしまうと、 条件oの必要十分条件として、 条件bが完全に不要になってしまうことを 次のように示します。 条件o ∀P(P≡T(P)) 条件q ◎≡T(◎) 条件a ∀※∀Q(T(※Q)≡※T(Q)) (1)まず、条件o ⇒(条件qかつ条件a)は明白です。 (2)次に、(条件qかつ条件a)⇒ 条件oを示します。 条件aの特殊例として、 ∀P(T(P&◎)≡(P&T(◎))) が成り立つ。 このとき、◎が恒真式であること、 および、条件qにより、 ∀P(T(P)≡(P&◎)) が成り立つ。 このとき、再び、◎が恒真式であることにより、 ∀P(T(P)≡P) が成り立つ。 (1)および(2)により、 条件o ⇔ (条件qかつ条件a) が成り立つ。■ ご検討ください。 では、また。 鈴木 聡 ▲ 2003年12月18日 23:55 鈴木 聡 様 三浦俊彦 今回は納得です。 条件bが不要になることは論点先取ではないにせよ、私としては面白くありませ ん。 条件aの議論だけで、発表原稿と同様の議論を組み立てることもできそうですが、 むしろこう考えました。 恒真式または恒偽式に関する 条件q ◎≡T(◎) は、やはり、定義や規約として特別待遇するのではなく、証明すべき条件oの内容 に一部として、未決にしておかねばなるまい。 その場合、条件o≡条件a+bの証明は、もともとの発表原稿(p.1~2)にあった とおりのものに戻ります。 (そもそも、恒真式または恒偽式を持ち出したのは、証明をわかりやすくするため に過ぎなかったので、はじめから以下のようにすればよかったのです) ■元の証明(p.1~2)の背理法版■ 条件o P≡TP が必ずしも成り立たないとする。 条件oが成り立たない特定の文を pと書こう。つまり、 p≡Tp は成り立たないと仮定する。 Qを任意の文とし、 条件aの特殊例 T(p※Q)≡p※(TQ) 条件bの特殊例 T(p※Q)≡Tp※TQ から、条件aと条件bがともに成り立つためには p※(TQ)≡Tp※TQ が必要。 ★ここで、※(TQ)は共通の意味成分だから、 p※(TQ)≡Tp※TQ の成立は、 p≡Tp の成立と等しい。★ しかるに、仮定により、p≡Tpでない。よって、 p※(TQ)≡Tp※TQ が成り立たない。 つまり、条件aと条件bはともには成り立たない。 これは、両条件の特殊例がともに成り立つことはないことを意味する。 もともとの一般的な条件a、条件bがともに成り立つことは尚更ありえない。 つまり、条件oを否定すると、条件a,bがともに成り立つことができない。 対偶をとると…… 条件a,bがともに成り立つならば、条件oは成り立つ。 つまり、条件oは、条件a+bのための必要条件である。 証明終わり いかがでしょうか? 注1にも書いたとおり、≡は単なる同値ではなく(同値だとしたら条件oは自明も 甚だしい)、同義関係を表わすので、★で挟まれた部分が成立するはずです。 ※は、任意の演算子ですが、「かつ」と「または」の両方について成立すればたぶ ん十分でしょう(杜撰な直観ですが)。 ただし、恒真式または恒偽式を用いた前の証明に比べて、★で挟まれた部分は自明 性が劣ります。 ここは、世界の集合のモデルを作ってきっちりやらねばならないところでしょう。 時間があったらやってみたいと思いますが、さて、ココマデで何かお気づきでしょ うか? ▲ 2003年12月24日 15:24 三浦さん 鈴木@駒澤です。 返事が遅くなってすみません。 今回の証明の★で挟まれた部分 に対する反例を次のように構成します。 なお、T(P)≡Pに対する 必要十分条件を求めるときには、 Tにあらかじめ何の条件も 加えてはならないことに注意して 次の反例を見てください。 表現Aに対して、 Aに対応する可能世界の集合≪A≫ をAの意味論的値とします。 (1)※が∨であるとき ≪T≫を 任意の論理式に対して、 可能世界全体の集合 を付値する関数とします。 pを 恒真式ではない 或る特定の論理式とします 。 このとき、 (p∨T(Q))≡(T(p)∨T(Q)) は成り立つけれども、 T(p)≡p は成り立ちません。 (2)※が&であるとき ≪T≫を 任意の論理式に対して、 空集合を付値する関数とします。 pを 恒偽式ではない 或る特定の論理式とします。 このとき、 (p&T(Q))≡(T(p)&T(Q)) は成り立つけれども、 T(p)≡p は成り立ちません。■ ご検討ください。 では、また。 ▲ 2003年12月24日 22:01 鈴木聡 様 三浦俊彦 コメントありがとうございます。 ただ、今回の御指摘は間違っているようです。 > T(P)≡Pに対する > 必要十分条件を求めるときには、 > Tにあらかじめ何の条件も > 加えてはならないことに注意して それはそのとおりですが、以前も申し上げたように、Tは変項ではなく定項です。 Tはその性質が予め限定されていないにもかかわらず、あくまで定項であるという ことはご注意ください。 鈴木さんの構成では、※が∨のときと&のときとで、Tが異なっています。これで は反例になっていません。 Tをあえて変項として考えたければ、条件a,bは、∃Tという、演算子Tの存在 量化が一番外側に付いたものとお考えください。 定項Tが条件a,bをともに満たすというもともとの趣旨は、言い換えれば、 Tの存在量化の形にした条件a,bを同時に満たす特定のTの値があるということ です。 つまり、任意の命題Qと所与のpについて、 ∃T((p∨T(Q))≡(T(p)∨T(Q))) ∃T((p&T(Q))≡(T(p)&T(Q))) をそれぞれ満たすTの値(解釈)がそれぞれ見つかればよいということではなく、 ∃T((p※T(Q))≡(T(p)※T(Q))) が成り立たねばなりません。すなわち、 定式の※に、∨を代入しても&を代入しても、任意の命題Qと所与のpについてこ の式を満たす共通のTが存在しなければなりません。(pは、p≡Tp が成り立た ないと仮定された命題) 一体そんなTはあるのでしょうか? (しかも、※は、⊃、≡などの値もとりうるのです! さしあたり注2、注3の配 慮のために※の領域は真理関数に限定したいと思いますが) ▲ 2004年1月3日 18:37 三浦さん あけまして おめでとうございます。 鈴木聡です。 毎度返事が遅くて すみません。 早速、本題に入ります。 次のようにして、 条件o ⇔ 条件a を証明することができるので、 条件bは結局不要になるでしょう。 条件o T(P)≡P 条件a T(※Q)≡※T(Q) ・条件o ⇒ 条件aは自明です。 ・条件a ⇒ 条件oを示します。 ◎を恒真式とします。 ※として◎∨をとると、 条件aの特殊例として、 T(◎∨Q)≡(◎∨T(Q)) が成り立ちます。 このとき、◎が恒真式であるので、 T(Q)が何であれ、 (1)T(◎)≡◎ が成り立ちます。 また、※としてP&をとり、 Qとして◎をとると、 条件aの特殊例として、 (2)T(P&◎)≡(P&T(◎)) が成り立ちます。 ◎が恒真式であること、 および(1)および(2)により、 T(P)≡P が成り立ちます。■ ご検討ください。 では、また。 ▲ 2004年1月5日 3:56 鈴木聡 様 三浦俊彦 あけましておめでとうございます。 なるほど、言われるとおりですね。ありがとうございます。 しかし考えてみると、今回の鈴木さんの構成において ※として◎∨をとると、 ※としてP&をとり、 というふうに苦心せねばならなかったのは(この類はもともと私が始めたわけでし たが)、条件bの二項演算子を真理関数に限定するためですよね。 しかし条件bが不要ということであれば、なにもわざわざ※として◎∨やP&を呼 び出す意味はないことになります。 そもそもが、P&は条件aの一項演算子としては真理関数ではないのだから。 そこで、真理関数に限定するという制約を取っ払ってしまうと、次のようにして、 条件a、条件bはそれぞれ単独で条件oに等しいことが示されます。 ■条件o=条件aの証明 条件o T(P)≡P 条件a T(※Q)≡※T(Q) 条件aの※を、任意の命題Rについて ※R≡P となる定値関数とする。 そのような定値関数は、任意のPについて定義できる。 条件aはそのすべてについて成り立つから、T(P)≡P ■条件o=条件bの証明 条件o T(P)≡P 条件b T(Q※R)≡T(Q)※T(R) 条件bの※を、任意の命題S,Tについて、S※T≡P となる定値関数とする。 そのような定値関数は、任意のPについて定義できる。 条件bはそのすべてについて成り立つから、T(P)≡P かくして、当初の拙論どおり、演算子を任意に広げると、条件aと条件bはTの条 件として同値であり、真理の余剰説そのものということになります。 つまり拙論は、ふたつの側面から、ダブった形で、条件oの成立条件を述べていた ことになります。 しかし問題は、私が注3で懸念したように、条件bの二項演算子を、&のみ、ある いは∨のみ、あるいは真理関数のみに限定したいということです。 ただし、条件aの一項演算子についてはべつに真理関数に限定はしなかったのと同 様、条件bについてもそんな制限は必要ないのかもしれませんが。条件aが条件oの 必要条件でさえあれば、議論そのものに「誤り」はないことになるので―― このあたり、どうお考えですか? ポイントはふたつ、 ■文は同意味のまま任意の文結合子で分解できるかどうか、 ■条件bは、二項演算子を真理関数に限定したとき、条件oと同値になりうるか。 (あらためて添付ファイルで拙論をお送りします。配布原稿と同じモノですがミス プリントが一ヵ所直ってます。どのみちまだ不完全ですからいずれ書き直しますが。 ■P.S. なお、そのうちに、このやりとりがまとまりをみせたら、 【鈴木聡氏との質疑応答】とでも題して私のホームページ↓にアップロードしたい と思いますがいかがでしょうか * http://russell-j.com/miurat1/ ▲ 2004年1月13日 3:01 三浦さん どうも、鈴木聡です。 毎度、返事が遅れて、 すみません。 まず、ホームページへのアップロード についてです。 僕のメールに不正確な部分が 散見されるのがちょっと恥ずかしいのですが、 議論がまとまりをみせたら、 アップロードして下さい。 では、本題に移ります。 まず、第一の証明についてです。 この証明は、 条件o ⇔ 条件a の証明にはなっていません。 ここで、 条件o ∀P(T(P)≡P) 条件a ∀※∀Q(T(※Q)≡※T(Q)) 条件b ∀※∀Q∀R(T(Q※R) ≡(T(Q)※T(R))) 条件c ∀P∃※∀R(※R≡P) 条件d ∀P∃※∀S∀U((S※U)≡P) とします。 第一の証明は、 条件cという存在量化子を含む 非常に強い前提の下での 条件o ⇔ 条件a の証明です。 次に、第二の証明についてです。 この証明も、 条件o ⇔ 条件b の証明にはなっていません。 この証明は、 条件dという存在量化子を含む 非常に強い前提の下での 条件o ⇔ 条件b の証明です。 次に、条件aについてコメントします。 もし※に&を代入すれば、 ∀Q(T(&Q)≡&T(Q)) というill-formedな表現が 形成されます。 ですから、 何らかの言語Lを確定し、 一項作用素を定義し、 一項作用素全体の集合をαとして、 条件a ∀※∈α∀Q(T(※Q)≡※T(Q)) とするほうがよいでしょう。 次に、条件bについてコメントします。 もし※に¬を代入すれば、 ∀Q∀R(T(Q¬R)≡(T(Q)¬T(R))) というill-formedな表現が 形成されます。 ですから、 言語Lの下で、 二項作用素を定義し、 二項作用素全体の集合をβとして、 条件b ∀※∈β∀Q∀R(T(Q※R) ≡(T(Q)※T(R))) とするほうがよいでしょう。 他の条件についても、 条件c ∀P∃※∈α∀R(※R≡P) 条件d ∀P∃※∈β∀S∀U((S※U)≡P) と書き換えることにします。 ご検討ください。 では、また。 ▲ 2004年1月15日 3:38 鈴木聡 様 三浦俊彦 条件c ∀P∃※∀R(※R≡P) 条件d ∀P∃※∀S∀U((S※U)≡P) この二つの条件は、全く問題ないはずです。 ※はもともと任意の演算子としており、※として◎∨とかP&のような異様なもの が認知されてきているのですから。 鈴木さん自身も当初から、任意の論理式に対して可能世界の集合を付値するモデル によって演算子Tや※を考えていたわけですから、各論理式を可能世界の特定の集合 に対応させる関数、つまり特定の命題への定値関数も、当然、※の論議領域に含まれ るていなければなりません。それを除外する条件が何もついていないのですから。 定値関数を※の領域から除外するべき理由がありましたら伺いたく思います。 また、第二点 > 一項作用素全体の集合をαとして、 > 条件a ∀※∈α∀Q(T(※Q)≡※T(Q)) > とするほうがよいでしょう。 > 二項作用素全体の集合をβとして、 > 条件b ∀※∈β∀Q∀R(T(Q※R) > ≡(T(Q)※T(R))) > とするほうがよいでしょう。 は、特に問題にならないでしょう。 これを言うなら、QやRも、同じ階型の命題の集合の要素として明示しなければな らなくなりますが、 ∀※∈β∀Q∈ρ∀R∈ρなどと書くのは煩雑すぎます。 ∀xFx≡~∃x~Fx のような普通の表現も、いちいち ∀x∈θFx≡~∃x∈θ~Fx (θはFより階型の低い実体の集合) などと 書きませんし。 また、それ以前の問題として、ill-formedな表現はもともと真理値も意 味も与えられないので、≡を主演算子とする条件b,cの「反例」にはなりえず、無 害です。 |