三浦俊彦「結ぼれ、了解、異文化、鼠−R. D. レインの視線−
『比較文学・文化論集』(東京大学比較文学・文化研究会)1985vol.1-2(通号n.2)pp.37-52 掲載
(p.18)
(2)村上光彦氏は#7,#8を次のごとくに翻訳されている。
ただいまの/永遠(とわ)にこそあらね/ときとして/まさりてあるか/絶えてなきには(『好き? 好き? 大好き?』みすず書房p.142)
 愛は似る/降りくる雪の/地に落ちて/落つればただに/消えもてゆくに
 さなりとは/語りたまふな/たばかりて/愛はとこしへ/飛 びゆくは時(同書p.145)
 なお、本文に引用のレインのテキストは全て邦訳が刊行されており筆者は参照させていただいた、が、とくに Knots などの場合、内容の論理的錯綜に巻き込まれてしまったか文法上の大きな誤訳−疑問詞と関係代名詞のとり違え(『結ぼれ』みすず書房p.100)、副詞の誤解(同書p.21)、*印の位置のとり違え(同書p.85、本文中引用#3にあたる)そのほか− が目立ち、一部原形をとどめないほどに変質させられているのであり、訳本それ自体が一つの独立した魅力ある作品をなしている事実は否定しうべくもないけれども、些か残念ではある。


〔テキスト〕
R D Laing, Conversations with Children. Penguin Books 1978.
  :   The Divided Self. Pelican Books 1965.
  :   Do You Love Me?, Penguin Books 1977.
  :   The Facts of Ltfe. Penguin Books 1977.
  :   Knots, Penguin Books 1971.
  :   Self and Others, Pelican Books 1971.
B Russell, An Inquiry into Meaning and Truth, G. Allen & Unwin 1940.
  :   My Philosophical Development, Unwin Books edition 1975.
R. D. レイン『経験の政治学』(みすず書房、昭和48年)
『荘子』第一冊(岩波文庫、昭和46年)
『老子荘子』(中央公論社、世界の名著4、昭和53年)