三浦俊彦による書評

★ 宮田珠己『晴れた日は巨大仏を見に』(白水社)

* 出典:『読売新聞』2004年7月25日掲載


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 日本各地に点在する巨大仏。宗教法人のもあるが、資産家が個人的に建造したものがほとんど。たいてい観光地図に載っておらず、地元でも無視されている。周囲の景観との相談なしに唐突にそびえ立つ像の中から、ウルトラマンより背が高い十五体を厳選、初の巡礼記がここに上梓された。
 青空にぬっと映えるシュールな写真群は怪獣マニア必見。ニュータウンの坂越しに、ジェットコースターのループ内の遠景に、モノレール軌道の彼方に、高圧線の鉄塔列に背を向けて、知られざる奇観が現出する。
 昭和~平成バブルの大仏時代、巨大仏に期待される役割は「救い→驚き→笑い」と変化したと著者は見る。信仰からスペクタクルへ、果てはツッコミの対象へ。
 歴史宗教のキッチュ化がいくらでも黙認される大らかな東アジア的風土を、大阪万博系の虚ろな記憶の中で堪能するためのガイドブック。本書を読んで私も仏教が大好きになりました。

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