三浦俊彦による書評

★ 小中千昭『ホラー映画の魅力』(岩波アクティブ新書)

* 出典:『読売新聞』2003年11月2日掲載

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 ホラー映画はよく観るが、心底「怖え~」と慄えたことがない。観かたが悪いのだろうか。
 制作現場から、脚本構造に沿って「本当の怖さ」を論じた本書は、私の疑問をほとんど解決してくれた。「因縁話は怖くない」「主人公を殺すな」「幽霊ナメ(背中越しの撮影)はするな」等々、なるほど「恐怖とは段取りである」。
 段取りの代表は「ショッカー」だろう。音響とともにキャラクターの間近に人や物が突然飛び出してくるあれだ。そのたびに「驚かすなよ、怖がらせろよ」と腹を立てていた私だが、本書いわくショッカーとは「これはホラー映画です」というメタメッセージであり、恐怖モードを自然に調える装置なのだと。ふむ、納得。
 怖がりたいならボケッと見てちゃダメ、自覚とコツが必要らしい。小中理論の「恐怖の方程式」は、よそでも使えそうだ。戦争の怖がり方ひとつ知らない人の増えている現在、ホラー観賞の感性と手法は、広い応用可能性を秘めていると見た。

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