三浦俊彦による書評

★服部裕幸『言語哲学入門』(勁草書房)

* 出典:『読売新聞』2003年4月20日掲載


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 哲学を学ぶには、入門書より原典を読めとはよく言われる。しかし言語哲学の主流「英米分析哲学」は、ほんと「イッちゃってる哲学」。原典となると数学ばりの論理記号を駆使してディテールを執拗に論じぬく専門論文ばかり、初心者にはちょっと近づきがたい。
 そこで入門書の出番だ。全十一章どこからでも読めるこの本、記号は使わず、言語学のトピックも含んでいて、哲学本来の射程距離を垣間見るには最適である。心、知識、文化、どんな主題も「言語の問題」へ変換すれば俄然洞察が深まるものだなあ、と好奇心そそられればしめたもの。他の哲学潮流の追随を許さぬ分析哲学特有のクリアな眺望があなたを待っている。
 昨年、同じ出版社から研究入門書仕立てで完結した『言語哲学大全』(飯田隆著、全四巻)に続き、ぐっとソフトな本書。ジャーナリズムやアマチュアリズムとはほぼ無縁に進化してきた分析哲学も、啓蒙的な裾野を広げて再出発する潮時を迎えたようだ。


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