バートランド・ラッセルのポータルサイト

バートランド・ラッセル『反俗評論集-人類の将来』の中の「知的戯言の概要(1943) 」(松下彰良・訳) 210 - Bertrand Russell: Unpopular Essays, 1950

Back(前ページ) Next(次ページ) Contents(総目次) full text

知的戯言の概要(1943) n.21

 人間が本当に、進化論を認める神学者が言うようにそんなに光栄あるもの(存在)かどうかという問題は別として この惑星(地球)上での生命がほとんど確実に一時的なものであるというさらに困難な問題が存在している。 地球は寒くなるだろうし、あるいは大気は徐々に飛び去るだろうし、あるいは水は不足してくるだろう。あるいは、ジェームズ・ジーンズ卿が陽気に(genially)予言しているように、太陽は(いずれ)爆発し、あらゆる惑星はガスと化するであろう。以上のうち、いずれが最初におこるかは誰も知らない。しかし、いずれのケースにおいても、人類は最後には死に絶えるであろう。もちろん、そのような出来事は正統派の神学の見地から見ればほとんど重要な意味はもっていない。なぜなら、(正統派の神学によれば)人間は不滅であり、地球上の人間が全員死んだ時には、天国と地獄において存在し続けるだろうからである。 しかし、そうであるなら、なぜこの世の(地球上での)発展について気をもむのか。原始的なスライム(泥のような生命体)から人間への漸進的進歩を強調する人々は、 この世俗的領域「地球」に重きを置くが、それ(地球)は、そういった人達(この世の生活を重視する人々)を、-地球上の全ての生命は星雲(銀河)と永遠の霜の間の(訳注:星雲状のガスが固まって恒星ができるということ)、あるいは恐らく一つの星雲と一つの星雲の間の短い幕間劇に過ぎないという結論から- 尻込みさせる(make shrink)であろう(そういった人々は尻込みするだろう)。人間の重要性(という考え)は- それは神学者にとってなくてはならない一つの教義であるが- 太陽系の将来についての科学的見解からはなんの支持を受けない(得られない)のである。

Outline of Intellectual Rubbish (1943), n.21

Apart from the question whether Man is really so glorious as the theologians of evolution say he is, there is the further difficulty that life on this planet is almost certainly temporary. The earth will grow cold, or the atmosphere will gradually fly off, or there will be an insufficiency of water, or, as Sir James Jeans genially prophesies, the sun will burst and all the planets will be turned into gas. Which of those will happen first, no one knows; but in any case the human race will ultimately die out. Of course, such an event is of little importance from the point of view of orthodox theology, since men are immortal, and will continue to exist in heaven and hell when none are left on earth. But in that case why bother about terrestrial developments? Those who lay stress on the gradual progress from the primitive slime to Man attach an importance to this mundane sphere which should make them shrink from the conclusion that all life on earth is only a brief interlude between the nebula and the eternal frost, or perhaps between one nebula and another. The importance of Man, which is the one indispensable dogma of the theologians, receives no support from a scientific view of the future of the solar system.


ラッセル英単語・熟語1500
(掲載日:2023.03.21 /更新日: )