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バートランド・ラッセル『反俗評論集-人類の将来』の中の「知的戯言の概要(1943) 」(松下彰良・訳) 190 - Bertrand Russell: Unpopular Essays, 1950

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知的戯言の概要(1943) n.19

 うぬぼれ(自己過大評価)は、個人のものであれ、全体のもの(generic 種としての;一般的な)であれ、我々のほとんどの宗教的信仰の源泉である。(人間の)でさえ、うぬぼれ(自己過大評価)からでてくる一つの概念である。ボロウ(George Borrow、1803-1881:英国の作家)は、いつも憂鬱そうにしているあるウェールズの説教者(preacher 伝道者)に会った時の様子を語っている。同情して(理由を)聞いたところ、その説教者は彼の自分の悲しみの源泉を告白するにいたった。(即ち、その説教者は)7才の時に彼が聖霊(注:the Holy Ghost 聖霊:三位一体説の第3位; キリストを通して人間に働きかける神の霊のこと)に対して罪をおかしたとのことである。。ポロウは(次のように)言った。「わが親しき仲間よ、そんなことで悩まないでください。同様の例(ケース)を何十人も私は知っています。そのことで、あなたがあなた以外の人々から切り離されていると想像しないでください。知らべてみれば、同様の不幸で苦しむ大勢の人がいることに気づくことでしょう」。
 その瞬間からその人は救われた。 彼(その説教者)はその時まで(その言葉を聞くまでは)自分が特異であるという感情(feeling singular,)を楽しんでいたのである。しかし、罪びとの群の一人であることにはまったく何の喜びもなかったのである(訳注:こういった悩みをもっているのは自分だけだと思い「その感情をいわば「楽しんで)いたが、同じような感情を多くの人が持っているなら「特異ではなくなり」、喜べなくなったとのことで、ラッセルの皮肉も感じられる)。大部分の罪びとはむしろ、自己のことしか 考えないということは比較的少ない。 しかし、神学者達が、人間は神の愛の対象であるばかりでなく神の怒り特別な対象であるという感情を楽しんでいるに違いない(疑いがない)。(詩人の)ミルトンは、我々に次のように断言している。(即ち、)人間の堕落以後、(楽園を追放された以後)
太陽は、
初めてその規矩を授けられたり、その運行し輝くは
地上を耐え難き寒気と暑熱にて苦しめ
北よりは老いぼれたる冬を呼び来たり
南よりは夏至の暑熱を
持たらさんがためなり

【↑ 上記は、『人類の将来-反俗評論集』(理想社、1958年)に収録されている山田英世(訳)です。しかし、岩波文庫版のミルトン『失楽園(楽園喪失)』第10話の平井正穂(訳)では次のように現代語(訳)されており、かなり訳し方が異なっています。

「初めて太陽は、ほとんど耐え難いほどの寒さと暑さを地球に及ぼすには、どう動き、どう照るべきか,北から老いさらばえた「冬」を呼び、南から夏至の灼熱の酷暑をもたらすにはどうすべきか、について命令を受けた。・・・」

 なお、第10巻の概要は、「第10巻:アダムとイヴが罪を犯したことを知った神は、御子を遣わし、彼らに宣告を下す。サタンは自分の成功を報告しに地獄に帰るが、仲間もろとも蛇の姿に変えられる」とのことです。】

Outline of Intellectual Rubbish (1943), n.19

Self-importance, individual or generic, is the source of most of our religious beliefs. Even sin is a conception derived from self-importance. Borrow relates how he met a Welsh preacher who was always melancholy. By sympathetic questioning he was brought to confess the source of his sorrow: that at the age of seven he had committed the sin against the Holy Ghost. "My dear fellow," said Borrow, "don't let that trouble you; I know dozens of people in like case. Do not imagine yourself cut off from the rest of mankind by this occurrence; if you inquire, you will find multitudes who suffer from the same misfortune." From that moment, the man was cured. He had enjoyed feeling singular, but there was no pleasure in being one of a herd of sinners. Most sinners are rather less egotistical; but theologians undoubtedly enjoy the feeling that Man is the special object of God's wrath, as well as of His love. After the Fall, so Milton assures us --
The Sun
Had first his precept so to move, so shine,
As might affect the Earth with cold and heat
Scarce tolerable, and from the North to call
Decrepit Winter, from the South to bring
Solstitial summer's heat.


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(掲載日:2023.03.09 /更新日: )