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バートランド・ラッセル『反俗評論集-人類の将来』第1章(松下彰良・訳)

* 原著:Bertrand Russell: Unpopular Essays, 1950

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第1章「哲学と政治(1947)」n.34


ラッセル英単語・熟語1500
 私達の時代においては、ロックの時代と同様、経験主義的自由主義(それは民主的社会主義と相容れないものではない)こそが、一方では自分の信念のために科学的根拠を要求し、他方ではあれこれの政党や信条の流行よりも人類の幸福を欲求する人々によって採用されうる唯一の哲学である、と私は結論づける。混乱し困難なこの世界が災難から逃れるためには、様々なものが必要である。そうして、そのなかで最も必要なものは、いまだ自由主義の信念を保持している国々において、それらの信念が心からのものであり奥深いものでなければならないこと、しかも 右翼および左翼の教条主義に対して弁解がましく物を言うのではなく、自由、科学の自由、相互の寛容の価値を深く確信したものでなければならないということである。というのは、これらの信念なく しては、政治的には分断さているが技術的には統一されている地球上での生活は可能であり続けることはないであろうからである。

Philosophy and Politics, (1947),n.34

I conclude that, in our day as in the time of Locke, empiricist liberalism (which is not incompatible with democratic socialism) is the only philosophy that can be adopted by a man who, on the one hand, demands some scientific evidence for his beliefs, and, on the other hand, desires human happiness more than the prevalence of this or that party or creed. Our confused and difficult world needs various things if it is to escape disaster, and among these one of the most necessary is that, in the nations which still uphold Liberal beliefs, these beliefs should be whole-hearted and profound, not apologetic towards dogmatisms of the right and of the left, but deeply persuaded of the value of liberty, scientific freedom, and mutual forbearance. For without these beliefs life on our politically divided but technically unified planet will hardly continue to be possible.

(掲載日:2023.08.30/更新日: )