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「バートランド・ラッセル平和財団(について)」(岩波書店編集部・訳)

出典:『世界』(岩波書店)n.219:1964年3月号,pp.46-49



 ここに御紹介したのは、前掲の論文(人類の存続を脅かすもの)とともに送られてきたバートランド・ラッセル平和財団(Bertrand Russell Peace Foundation) のアピールである。この文書は、人類の生存そのものが脅されている危機的状況をのりこえるためには、すべての国家権力から独立した国際的平和組織が確立されねばならないとの立場から、この財団の意図を訴え、〝あらゆる国の全ての人に対して″これを支持するようよびかけている。(岩波書店編集部)
【松下追記: Bertrand Russell Peace Foundationホームページ

バートランド・ラッセル平和財団

<発起人>

ベッドフォード英公爵
マックス・ボーン博士(英人、ハイデルベルク在住、ノーベル物理学賞受賞者)
ポイド・オァ卿(英国学士院会員、ノーベル平和賞受賞者)
パブロ・カザルス(プエルトリコ在住、セロ奏者)
ダニロ・ドルチ(イタリア作家、シシリー)
ベルギーのエリザペス皇太后
ジャワハルラル・ネルー(インド首相)
ヴァネッサ・レッドグレーヴ(英女優)
アルベルト・シュヴァイツァー(ランバレネ在位、ノーベル平和賞受賞者)

 バートランド・ラッセル平和財団は次の分野における研究を支援する。

 軍備、核戦争の性格、核戦争の蓋然性(プロバビリティ⊥)、化学・生物学戦争の性格と蓋然性、兵器体系(ウェポンズ・システム)、技術的事故の見通し

 闘争、諸大国間の関係、冷戦の原因、闘争のイデオロギー的・経済的・心理的原因、国境紛争、国家内の闘争

 資源、軍備競争のコスト、資源の加速利用、大量飢餓、貧困と人口過剰、生活水準、非工業諸国の開発

 思想伝達法(コミごーケーションズ)、情報源、思想伝達法の政府および民間による統制、冷戦が思想團達法に与える影響

 共存、国際協力、国際連合、中立派の役割り、調停

 抵抗運動(レジスタンス)、国際平和運動、軍縮および社会変革、権力源、核・化学的・生物学的軍備の縮小撤療にあたっての障害

 バートランド・ラッセル平和財団は、核戦争の脅威にたいし、国際的レジスタンス運動を発展させようとするラッセル卿の努力に、広くかつ組織的な基盤を与えるつもりである。

 近年、ラッセル卿は、国際的危機の緩和を助け、その解決に必要な状況をつくりだすのを助けることに尽力してきた。
 キューバ危機、中印国境紛争、アラブ・イスラエル紛争、ベルリン問題、中部欧州の将来について--相い争う政府はラッセル卿個人の調停を歓迎あるいはとくに求めた。なぜならば、ラッセル卿の調停は公平で効果的な発言をつうじて、提案と対案との交流を可能にしたからである。

‘  ラッセル卿は、中立主義の意見を国際的正気の側に動員するため努力してきた。
 ラッセル卿は、世界中の中立国首脳とたえず通信し接触を保つことに努めてきた。中立国首脳の多くは、中立主義が国際緊張を解決するためもっとも有望な手段の一つであるというラッセル卿の意見を受け入れ、それに基づいて行動し始めた。

 ラッセル卿は、数十カ国で核戦争にたいする大衆レジスタンスの発展を助けてきた。
 ラッセル卿は、第三次世界大戦にたいするレジスタンスの国際的シンボルである。彼は国際的平和運動を実際に助けるため、自分の学究的な仕事をすべて投げうっている。
 ラッセル卿は、冷戦の犠牲者、東西双方の独裁政府の犠牲者を何百人も助けた。
 多くの国の政治犯は自分が釈放されたのはラッセル卿の個人的介入のおかげだとしている。いぜん獄中にある他の政治犯たちの窮状は緩和されるか、いっそうよく知られるようになった。その他の政治的偏見の犠牲者にたいしては、査証(ビザ)が得られるようにしたり、同種の援助が与えられた。

 ラッセル卿は、現代の戦争についての事実をいっそう広く知らせるようにした。
 あらゆる大国はその政策がもたらす悲惨な結果をかくすことに努めているが、それにもかかわらず、ラッセル卿は多くの著書、何百という論文と演説を通じて、核戦争準備の現実を明らかにするのに大きな役割りを演じた。

 ラッセル卿が全力をあげているこの仕事は続いており、また急速に拡大している。平和財団が設立されたのは、これらすべての分野で特に成果をあげることがおおいに必要とされ、またそのチャンスがあるからである。平和財団は、その特定の諸計画の数と規模からして、その目的に共鳴するあらゆる人の参加を求めまた歓迎する。

財団の計画

 新聞。この新聞は、他では押えられるか、都合よく無視されてしまうようなニュースを掲載するとともに、平和財団の仕事を知らせる。
 商業的、政治的圧力を受けない印刷、出版,施設

 核時代の現実について想像力をかきたてるような記録映画その他。  広くアッピールする計画のラジオ放送局。この放送局は、核軍縮を呼びかける世界の声となり、数カ国語のプログラムを備える。

 バートランド・ラッセル・ハウスがロンロンドンに設立され、平和財団の運営本部となり、また、国際的平和運動のセンターとなる。他の世界各地にも事務所が開設される。

 平和財団のスポークスマンたちは、その目的を説明し、支持を統合するため、平和運動に積極的なグループの間を旅行している。平和財団の計画は野心的であり、人類が生きながらえるかどうか心配する人たち全部の決然とした支持を必要とする。この計画は大きな資金の裏付けがなくては達成されないだろう。蓄積されつつある資金はもちろん多額にのぼっているが、寄付は多少をとわずすべて役に立つ。

あなたも、平和財団の計画を助けるため、いまお出しになれる額を寄付していただきたいし、あるいは定期的に寄付するようにしていただきたい。

あらゆる連絡は左記へ

《理 事》
 メリット勲位、英国学士院会員 ラッセル伯爵。
 ラッセル伯爵夫人(財政担当)。
 チャールス・R・エリス(書記)。
 グリストファー・ファーレー;トム・キンゼー;パット・ポットル;ラルフ・シェーンマン。


バートランド・ラッセルからのメッセージ


ラッセル関係電子書籍一覧
 長年にわたり、明けても暮れても、核による破壊の脅威を防ごうと働いてきたわれわれは、自分たちの見解を伝える手段を持たなかったり、または政府のとる絶望的な政策に代るものを国民に組織的に与える手段を持たなかったりする場合の挫折感を知っている。われわれは語り、書き、会合を開き、デモを行なってきた。しかしながら、われわれのうちのある者は、われわれの努力が情勢の重大さに見あうところまで達していないし、この仕事に参加する人たちの献身ぶりにもかかわらず、われわれの存在を知らせその行動を効果的にできるほど、われわれの努力が国際的に統合されてはいないと感じている。
 この平和財団は、長い間の慎重な準備を経て設立されるものであり、核戦争に反対する国際的仕事を推進するため、われわれ自身のマス・コミ手段を確立しようと空前の規模で組織化をはかろうとするものである。われわれは、当局から金をもらって当局のためにウソをつく人々に依存するのをやめるだろう。この努力、この企ては、〝核軍絡を即時行ない人類を生きながらえさせる〟という主張に共鳴するあらゆる人々から明確な支持を得られた場合にのみ、成功をおさめることができる。このような支持が積み重なれば、その結果は圧倒的なものとなろう。(たとえば)人類の破壊で利益を得る連中にいっさい頼ることなく、西ヨーロッパ全土をカバーできるラジオ放送局を創設できるのである。
 このパンフレットは、平和財団の当面の仕事を手みじかに述べたものである。われわれは、過去数カ月間の仕事を明らかにしたもっと詳細で練りあげた文書を準傭中である。わたしは、あらゆる国のすべての人にたいしこの仕事をいま支持していただきたいと訴えるものである。

英ウェールズ州、メリオネス、ペンリンドウードレース、
プラス・ペンリンにて
パートランド・ラッセル

ウ・タント国連事務総長からの手紙

 ラッセル卿の平和のための努力を拡大、継続するため、ラッセル卿の名を冠した財団の発足が提案きれていることを知り、よろこばしく思っております。ラッセル卿は核兵器を無制限に累積することの愚かさと危険を最初に見通した一人でありました。
 初期のころラッセル卿はこうした傾向にたいし事実上、一人十字軍として戦ってきましたが、いまではずっと多くの支持者を持っています。一方的軍縮が賢明かどうかについては見解の相違があるかもしれませんが、私は、核兵器の無制限な製造、実験、改良、蓄積が人類にたいする最大の危険の一つであり、また人類を生き残らせるためにもっとも重大な脅威の一つとなっているという点で、ラッセル卿と同感であります。
 したがって、わたしは、ラッセル卿がこれほど長く、またあれほど身せささげて行なってきた平和十字軍を組織化しようという企てが成功するよう望みます。
 ウ・タント(署名)