バートランド・ラッセル(著)『懐疑論』への訳者あとがき
* 出典:バートランド・ラッセル(著),東宮隆(訳)『懐疑論』* 原著:Sceptical Essays, 1928/訳書:みすず書房,1963年7月刊。278pp.
* (故)東宮隆氏(1912-1985)略歴
* 写真は、日本バートランド・ラッセル協会の研究会で講演する東宮隆氏
訳者(東宮隆)あとがき
今世紀の非合理の嵐を前にし、また非合理な信念が正義の名で流行している現代世界において、世界の真の進歩は、実際と理論双方の上での合理性の増大にあるというのが、本書の主題である。しかし、これだけならば、この書物の著者をまたなくても、ほかにいくらもそのような主張を持った人はいるであろう。げんに、理論の上での合理性の探究は可能であっても、実際の上での合理性の伸長は困難だというくらいのことならば、誰もが直接にいだいている感想であり、理想を遠くに置いて遅々とした現実に半ばあきらめをいだくということならば、これまた私達の偽りのない気持でもあるからである。問題は著者がこの主題を展開してゆく際の徹底的、破壊的――と同時に一脈の寛容をひそめた――批判と、積極的、現実的、建設的な提案とにある。
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1963年5月 東宮 隆