細川董(訳者)からバートランド・ラッセルへの手紙
* 出典:バートランド・ラッセル(著),細川董(訳)『ライプニッツの哲学』(弘文堂,1959年10月刊/ 5+3+5+8+287+6pp.)
細川董(訳者)からバートランド・ラッセルへの手紙 |
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拝啓 貴下にお手紙をさしあげ得ます事を衷心より欣快とする者であります。 外でもございません、同封の京都大学哲学科出版の「哲学研究」四五〇号所載の、私の「ヴォルフの哲学用語」についての論文の要旨でおわかりの如く、私はこの国に於ける唯一人のヴォルフ研究者であり、私自身の研究と関連して、私は、貴下の名著「ライプニッツの哲学」に非常に興味をいだき、且つ、大いに教えられる恩恵に沃しました。私は京都大学卒業以来、七年間、貴著の日本訳に従事して来ましたが、最近一応の完成を見ました。つきましては、日本版出版の御許可を得る事が出来ますれば幸甚でございます。 なお、純粋に学間的なこの作品と、貴下の水爆反対との関連について、日本の読者に与える適切な御言葉を以て、日本版の巻頭を飾り得るならば、これに過ぐるものはありません。 貴著に見られる如き、矛盾を見出さずにはおかない貴下の純粋に学問的な求道精神は、必ずや世界平和への道に通ずる事を確信して、筆をおきます。 一九五八年二月十二日 細川董 |
20 February, 1958. Mr. Tadasu Hosokawa, 122 Aioi-cho, Nishinomiya, Japan, Dear Sir, Thank you for your letter of February 12 and for the enclosure on Wolff's technical terms. I am glad to learn that you have been translating my book on Leibniz and I am most willing to give you permission for the publication, but it is legally necessary to obtain also the permission of the publishers Allen & Unwin (40 Museum Street, London, W.C.I). Thank you for your kind words about my work. Yours very Sincerely, Bertrand Russell |