ラッセル=アインシュタイン宣言の着想

ラッセル思想辞典』より
(From: The Autobiography of B. Russell, v.3, 1967).


 「人類の危機」と題する(1954年12月23日の)BBCクリスマス放送の最後を次のような言葉で結んだ。
「もし人々が皆その気になれば、人類の前には、幸福と知識と知恵の不断の進歩が横たわっている。それなのに争いを忘れることができないという理由で、死を選ぼうとするのか。私は一個の人間として(as a human being)、人間に向かって訴える。'人間性'を想い出しなさい。それ以外を忘れなさい。それができれば、新しいパラダイスヘの道が開ける。さもなければ、人類の絶滅しかないだろう。」
 この放送の反響を知り、私は次に何を為すべきかを考えた。諸国の協力を得るために、全力を傾倒する必要があると悟った。資本主義国からも、共産主義国からも、数多くの非常に有名で尊敬されている科学者達がこぞって進んで署名し、より一層彼ら(科学者達)と共同行動をとるように要請する声明文を作成することも可能かも知れない、との考えが浮んだ。まずアインシュタイン博士に手紙でこの計画について打診した。彼の熱心な返事には、健康が勝れないから共鳴しそうな科学者の名前をあげることぐらいしかできないが、計画を至急実行に移すこと、私(=ラッセル)自身が声明書の草案を書いてほしいとの二点が書かれてあった。これが、宣言(発表)への出発点であった。英国国会の世界連邦委員会関係議員とともにローマに向かう飛行機の中で、アインシュタインの訃報をパイロットの機内アナウンスで知り、全く生きた心地がしなかったが、パリのホテルに到着すると、声明書に署名する旨の彼からの手紙が届いていたのでホッとした。彼の生涯での公的な最後の仕事の一つとなった。
★参考写真:「ラッセル=アインシュタイン声明を記者発表するラッセル」)

(★『アインシュタイン平和書簡集』v.1(みすず書房、1974年12月刊)へのラッセルの序文