(本館) (トップ) (分館)
バートランド・ラッセルのポータルサイト用の日本語看板画像

バートランド・ラッセル結婚論論 第9章 人生における恋愛の位置 n.3(松下彰良 訳)- Marriage and Morals, 1929

Back(前ページ)  Forward (次ページ) 第九章 イントロ索引 Contents(総目次)

恋愛を阻害するもの


あるいは
アマゾンで購入
 けれども,現代世界においては,恋愛には,宗教よりもいっそう危険なもうひとつの敵がある。その敵とは,仕事と経済的成功(仕事に励んで経済的成功を得る)という信条(gospel)である。男は恋愛のために出世(キャリア)がさまたげられるようなことを許すべきではなく,もし許すようなら,その男は愚かである,と一般に-特にアメリカでは-考えられている。しかし,あらゆる人事(human matters 人間に関する事柄)におけると同様に,ここでもバランスが必要である。恋愛のために出世をすっかり犠牲にすることは -- 場合によっては,痛ましく英雄的であるかもしれないが- 愚かなことであろう。しかし,出世のために恋愛をすっかり犠牲にすることも同様に愚かであり,まったく英雄的でもない。にもかかわらず,これは起こるし,万人が金を奪いあうことを基礎にして組織されている社会においては必然的に起こる。

Chapter IX: The place of love in human life, n.3

In the modern world, however, love has another enemy more dangerous than religion, and that is the gospel of work and economic success. It is generally held, especially in America, that a man should not allow love to interfere with his career, and that if he does, he is silly. But in this as in all human matters a balance is necessary. It would be foolish, though in some cases it might be tragically heroic, to sacrifice career completely for love, but it is equally foolish and in no degree heroic to sacrifice love completely for career. Nevertheless this happens, and happens inevitably, in a society organized on the basis of a universal scramble for money.
(掲載日:2016.08.31 /更新日: )