バートランド・ラッセル「子供と理想的性格」
* 出典: On Education, especially in early childhool, pt.1, chap. 2, 1926『ラッセル思想辞典』所収<
人の世には、芸術家も、科学者も、農家も、肉屋も必要である。それぞれの職業にそれぞれの適性がある。自然を観照する性質は詩人なら賞賛されるが、郵便配達夫では必ずしも賞賛されない。周囲を観照しながら配達したのでは任務上望ましくないからだ。
しかし、人間がどの職業についても、共通して望ましい性格はある。万人に共通して望ましい性格の特質とは、活力(Vitality)・勇気(Courage)・感受性(Sensitiveness)・知性(Intelligence)の四つで、これだけあれば人間を幸せにすると思う。
青少年に適切な生理的・感情的・知的な保護育成を与えれば、この四つを誰もが持ちうると確信する。教育が最高限度の成果を示し、生活力・勇気・感受性・知性を備えた男女から成る社会は、今まで存在したどの社会とも甚だ異なる社会であり、不幸な人々はほとんど姿を消そう。今日の不幸の原因は、病気、貧困、不満な性生活である。それらもこの社会では稀れとなり、健康はどこにもあふれ、老化は遅れよう。貧困は産業革命以来の集団的愚かさの所産であり、感受性は人々に貧困の廃絶を望ませ、知性は人々にその達成法を示す。勇気は示された方法を決断・実践させる。人々の経験する性生活の不満は、一部は悪い性教育の結果である。
教育は新しい世界への鍵である。現在の悪徳を避け、望ましい徳目を身につけさせる役割こそが教育である。 (松下注:写真は、Beacon Hill School にて)