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バートランド・ラッセル「上品な人々」n.1 (松下彰良・訳) - Has Religion Made Useful Contributions to Civilization? 1930

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 上品な人々を賞賛する文章(注:article 記事)を書いてみようと思う(注:もちろん,「上品な人々 'nice people' というのは揶揄表現/因みに,このエッセイは,Nation 誌(New York), v.132: 29 Apr. 1931, pp.469-471 に掲載されたもの)。しかし,読者は,私が上品だと考えている人々はどのような人か,おそらく,まず知りたいと思うだろう。その本質をとらえることは,もしかすると,少しむずかしいかもしれないので,(そこで)その見出しのもとに入るいくつかの(人間の)型を列挙することから始めることにしよう(注:'perhaps' は「可能性はあるが確実性はない(また可能性の度合いはふれない)」というニュアンス)(年配で)未婚のおばはきまって上品であるし,もちろん,金持の場合は(注:皮肉のニュアンス)特にそうである。聖職者(牧師)も上品である。ただし,まれに,自殺とみせかけて聖歌隊の一員(の女性)と南アフリカに駆け落ちするような例外的な場合は除いてである。(注:ラッセルが愛読していたクリスティーの特定の作品を暗示しており、英米の読者ならクリスティーのあのミステリーのあの牧師のことだな、と理解できるかも知れない。)若い女性(たち)は,残念ながら,今日では,めったに上品ではない。私が若かった頃は,若い女性の大部分は,とても上品であった。即ち,若い女性(たち)は,母親と意見を共にしていた。何を話題にするかだけでなく,もっと驚くべきことに,個々の人間についても(注:他人に対する評価や好みについても),若い男性についてさえも,母親と意見を共にしたのである。彼女たちは「ええ,ママ」,また,「違うわ,ママ」,と(それぞれ)適切な時に言っていた。彼女たちは,父親を愛したが、それは自分たちの義務だったからであり、母親を愛したので、母親がほんのわずかな悪い行いさえしないように自分たちを守ってくれたからである。彼女たちは結婚するために婚約すると,礼儀正しく節度をもって恋愛をした。結婚すると彼女たちは自分の 夫を愛することを義務として認めたが,他の婦人たちに,たいへん苦心して努めている義務であるということを,理解させようとした(gave ~ to understand)。彼女たちは義理の両親に対し上品に接したが,一方,そのように義務を負っていない(他の)人間に対してはそういった努力はしないことを明らかにした。彼女たちは,他の婦人たちのことを,悪意を持って話すことはしなかったが,彼女たちの天使のような情け深さがなかったら,自分たちが言ったであろうこと(内容)をわかるようにして,口をつぐんだのである)。このタイプ(の人物)は,純粋かつ高貴な婦人と呼ばれているところのものである。このタイプは,残念ながら,老人の間を除いては,今日ほとんど存在していない。


ラッセルの言葉366
I intent to write an article in praise of nice people. But the reader may wish to know first who are the people that I consider nice. To get at their essential quality may perhaps be a little difficult, so I will begin by enumerating certain types who come under the heading. Maiden aunts are invariably nice, especially, of course, when they are rich; ministers of religion are nice, except those rare cases in which they elope to South Africa with a member of the choir after pretending to commit suicide. Young girls, I regret to say, are seldom nice nowadays. When I was young most of them were quite nice -- that is to say, they shared their mother's opinions, not only about topics, but what is more remarkable, about individuals, even young men; they said, "Yes, Mamma," and, "No, Mamma" at the appropriate moments; they loved their father because it was their duty to do so, and their mother because she preserved them from the slightest hint of wrongdoing. When they became engaged to be married they fell in love with decorous moderation; being married, they recognized it as a duty to love their husbands but gave other women to understand that it was a duty they performed with great difficulty. They behaved nicely to their parents-in-law, while making it clear that any less dutiful person would not have done so; they did not speak spitefully about other women but pursed up their lips in such a way as to let it be seen what they might have said but for their angelic charitableness. This type is what is called a pure and noble woman. The type, alas, now hardly exists except among the old.
(掲載日:2015.10.13/更新日:)