牧野力「アメリカのバートランド・ラッセル協会(Bertrand Russell Society)について」
* 出典:『日本バートランド・ラッセル協会会報』第23号(1975年5月)p.20-21.
* 牧野力は当時、早大政経学部教授、ラッセル協会常任理事。
* ここに記されている概要はあくまでも1975年当時のもの。
→ 現在の米国ラッセル協会の概要
●会長(President)
- Dr. Peter G. Cranford
●本部所在地(Permanent Address)
- The Bertrand Russell Society: 2108-1/2 Waltonway Augusta Georgia 30904
●入会資格
1)ラッセルに関心があり、協会の活動状況を知り、規約を守る人
2)ラッセル思想の普及に従事したい人
3)協会の中核となるラッセル愛好家で、長期間協会の活動に献身し、人間愛の実践と共に、権威あるラッセル研究家
以上のなかのいずれかで結構
●入会の動機(調査結果による)
1)ラッセルの人柄、著作、思想、目標などをもっと知りたい。
2)自分の関心と熱意とに共通する人々と接触したい。
3)ラッセルの目的、思想と目標の伸長を計りたい。
4)ラッセルの仕事を遂行しようとする団体の一員として他人の役に立ちたい。
5)自分の関心と熱意と共通する他の人々とラッセルの作品を研究討論できること。
6)自分の思想や行動に積極性を得ること。
7)自分の理解内容を伝え、地域社会に奉仕したい。
8)ラッセルの理想と言葉を普及させる自分の役割を果たすため。
9)協会を通じ、敬服するラッセルと一体の生き方をしたい。
10)協会に入会し、精神的利益を得たい。
11)ラッセルの抱いた合衆国のイメージを変えたい。
12)他のラッセル愛好家の抱く特別な関心内容を知ること。
13)ラッセルと共通する信念の人々の会であるから。
・ラッセルを知りたい、そして、多分、善良な生き方についてのラッセルの考えを他の人々に伝えたいという気持が一様に感ぜられる。
(★参考:日本バートランド・ラッセル協会入会の言葉)
●会員数(1975年3月末): 100名
●財政事情(手持ち資金?): 1,600ドル(被免税団体)
●協会の活動
協会の活動は次の委員会に分かれる。
哲学、科学、国際人権保護、情宜、教育、財務の各委員会。
・ケート(=ラッセルの長女)が教育と財務の長。
・科学委員会は、化学兵器を合衆国対外政策に使用しないよう国防省に要求し、一方、シンポジュームを開き、周知を計ったりした。
・国際人権保護委員会は、サハロフ博士救援や国際アムネスティとの連繋を保っている。
・情宜委員会は、合衆国建国二百年祭の特別企画として、ラッセルのアメリカ論の賛否両論の特集を行う。単行本刊行は資金待ち。
・哲学委員会は専門学者の集会の外に、月例会として討論会を地域社会のラッセル研究家と共に個人宅に開き、市民の哲学的関心や哲学的思考を向上させるのを意図している。昨年7月15日の例をとると、出席者12名で『幸福論』の読後感を談合した。罪に対するラッセルの考えに共通して賛成。反論は、イ)余りに合理主義的だと反撥し、ロ)現実を単純化し、現状に(人口激増、爆弾騒ぎ)合わない、ハ)6名中5名の女性は嫉妬の章に反対した。(米国では『幸福論』に何らかの理由で関心が多く集まるようである。)これに似た「読書会」的つどいは、地方支部(フレスコにて、昨年5月3日)でも開かれた。『幸福論』を700部購入し、会員、友人、同好者に無料配布した。会員にすすめる本として、『結婚論』、『幸福論』、『わが信念』、『変わりゆく時代への新しい希望』などがあげられている。アメリカには固有の精神風土から、「在り方」も日本とちがう。アメリ力のラッセル協会の隆盛を祈る。
以上は、同協会のニューズ・レターから取材(牧野力)