最も優れた技術者も良き市民でなければならない。また,私が「市民」と言う時,それは世界の市民を意味しているのであり,あれこれの宗派や国家の市民を意味しているのではない。知識や技能(技術)が増加するにつれて知恵はますます必要となる。というのは,そのような知識や技術における増大は我々の目的を実現する能力を増し,それゆえ,我々の目的が賢くないものであるならば悪に対する力(悪をなす能力)を増すからである。世界は現在,これまで決して必要とされてこなかった知恵を必要としている。即ち,知識が増大し続けるならば,世界は将来において,現在以上に知恵を必要とするであろう。
Even the best technicians should also be good citizens; and when I say 'citizens', I mean citizens of the world and not of this or that sect or nation. With every increase of knowledge and skill, wisdom becomes more necessary, for every such increase augments our capacity of realizing our purposes, and therefore augments our capacity for evil, if our purposes are unwise. The world needs wisdom as it has never needed it before; and if knowledge continues to increase, the world will need wisdom in the future even more than it does now.
出典: Bertrand Russell: Knowledge and Wisdom (1952).
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/1073_KW-060.HTM
<寸言>
知識は多いが知恵や思いやりがかける現代人。
知恵もあわせてもっていてほしい各国の権力者は、(それぞれの国で)権力者に上り詰める過程で感覚が麻痺し、知恵を身につけることができず、力こそ最重要と思うようになってしまった者が多い。
その結果、表面上は紳士気取りをしていても、その実、暴力団の権力闘争であるかのごとく、論理ではなく、大国(及び従属国)が自らの力を誇示して互いに競り合う戦国時代であるかのごとく状況を呈している。