私が彼女と初めて肉体関係を持った時(私たちが最初に恋人同士となった夜は、話すべきことが多すぎたために肉体関係は持たなかった。)、突如として獣のような勝利の叫び声が通りから聞こえてきた。私はすぐにベッドから飛び起きた。そして(ドイツの)ツェッペリン飛行船が炎に包まれながら墜落するのを見た。勇敢な飛行士が苦悶しながら死につつあるという思いが、群集に勝利の喜びをもたらした全てであった。その瞬間において、コレットの愛が私の心の避難所であった。それは、逃れられない残酷さそのものからではなく、人間とはなんであるかということを悟ることによる魂を切り刻む激しい苦痛からの避難所であった。
The first time that I was ever in bed with her ... we heard suddenly a shout of bestial triumph in the street. I leapt (= leaped) out of bed and saw a Zeppelin falling in flames. The thought of brave men dying in agony was what caused the triumph in the street. Colette's love was in that moment a refuge to me, not from cruelty itself, which was unescapable, but from the agonising pain of realising that that is what men are.
出典: The Autobiography of Bertrand Russell, v.1, chap. 1: The First War, 1968
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/AB21-190.HTM
<寸言>
少し想像するだけで,飛行船の中にいる乗組員がどういう常態かわかるはずである。しかし、それが敵国人の身に起こっていることであれば,具体的に想像しないどころか,群衆は歓喜に燃える。それが「人間性さ」と言うだけであまり気にかけない人にとってはたいしたことではないかも知れないが、身近な人間も結局同じだと思うと・・・。