協力は一つの理想としては欠点がある。自分ひとりのためではなく社会とともに生きることは正しい。しかし社会のために生きるということは,社会(一般)がやることと同じことを自分も行うということを意味しない。たとえばあなたが劇場にいて,火災がおこり,観客が出口に向かって殺到したとしてみよう。いわゆる協力(の美徳)以上の道徳観を持ち介わせない人は,群衆に抵抗することを可能とするような気迫を持たないために群集と一緒になって逃げるだろう。戦争に乗り出す国民の心理は全ての点でこれと同じである。
Co-operativeness, as an ideal, is defective: it is right to live with reference to the community and not for oneself alone, but living for the community does not mean doing what it does. Suppose you are in a theatre which catches fire, and there is a stampede : the person who has learnt no higher morality than what is called 'co-operation' will join in the stampede since he will possess no inner force that would enable him to stand up against the herd. The psychology of a nation embarking on a war is at all points identical.
出典: Of co-operation (written in May 18, 1932 and pub. in Mortals and Others, v.1, 1975.
詳細情報:http://russell-j.com/KYORYOKU.HTM
<寸言>
これは,ラッセルが Hearst 系の雑誌に掲載したエッセイに出てくる言葉です。
集団主義(組織の維持管理優先)は良い点もあるが,悪い点も多い。上に立つものは,従順な組織人を好みやすい。経営者の場合は,組織がうまくいっているだけではいけないので,集団主義をこわしても,利益を追求する場合も少なくない。しかし,うまくいけばよいが,失敗すれば,会社が傾き,多くの人を不幸にする。
政権をになっている者にとっても,従順な国民は御しやすく,権力の維持にはうってつけだが,為政者が「由らしむべし知らしむべからず」の姿勢で政権運営をしたり,(戦中の大本営発表のように)自分たちの都合のよいことばかり言い,マスコミも権力者へのリップサービスをし,権力者が裸の王様になると,国民が気がついた時には,・・・。
アベノミクスにより格差がますます進んで弁解が難しくなった場合,国民の不満をかわすために,(中国や北朝鮮が今やっているように)日本政府も外国との間の緊張関係を利用することにでもなったら・・・。
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