その刑務所に到着した時,入所のための調書をとらなければならない入口の看守によって,私は大変愉快な気分を味わった。彼が私の信仰している宗教は何かと尋ねたので,私は「不可知論者」(agnostic)だと答えた。彼はその語はどのように綴るのかと尋ねた。そうしてため息をつきながらこう言った。「まあなんというか,宗教はたくさんあるけど,全ての宗教が同一の神を拝んでいると思いますね」。この一言が,その後の約一週間,私を愉快にしてくれた。
I was much cheered, on my arrival, by the warder at the gate, who had to take particulars about me. He asked my religion and I replied 'agnostic'. He asked how to spell it, and remarked with a sigh: 'Well, there are many religions, but I suppose they all worship the same God.' This remark kept me cheerful for about a week..
出典:The Autobiography of Bertrand Russell, v.2 chap. 1:The First War, 1968]
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/AB21-270.HTM
<寸言>
ラッセルは第一次世界大戦時,反戦運動の罪でロンドンのブリクストン刑務所に約5ケ月間入れられた。兄がバルフォア元首相に働きかけてくれたお陰で刑務所の第一部門(ただし部屋代を支払う必要あり)に入れてもらうことができた。反戦活動のアピールを刑務所外に出すようなことをしなければ、読書や執筆活動は自由となった。投獄されている間、大量の読書をし、『数理哲学入門』(An Introduction to Mathematical Philosophy)を書き上げた(出獄した後、翌年の2019年に出版した)。
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