私は,全ての人が良い住居を与えられるべきだということと,にもかかわらず目ざわりだからという理由で新しい家屋は一軒も建ててはならないということとを一度に同時に要求することは論理が一貫していない,ということを祖母に理解させようと努めたことを記憶している。祖母にとっては,いずれの感情もそれぞれの権利をもっており,単なる論理のような非常に冷たい何らかの理由で,他の感情に席を譲るよう求められてはならなかった。
I remember trying to make her see that it was inconsistent to demand at one and the same time that everybody should be well housed, and yet that no new houses should be built because they were an eye-sore. To her each sentiment had its separate rights, and must not be asked to give place to another sentiment on account of anything so cold as mere logic.
出典:The Autobiography of Bertrand Russell, v.1, chap. 1, 1967
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/AB11-070.HTM
<寸言>
そう,論理的に矛盾したことを言っても平気な人は少なくない。通常は,論理的矛盾に気づいていない人が多いが,論理的矛盾はわかっていても気にしない人は政治家に多い。
自分の言動が矛盾している場合,関係する物事や主張のなかで何を優先するか考え(優先順位をつけ),その主張を実現するためには,その他のものをどう扱えばいいか,論理的に再考してみる必要がある。通常,我々は,考えるのがめんどくさい(考えるよりももっと楽しいことをしたい)ということから,中途半端なままにしてしまう。しかし,自分が大事だと思っていることが危険にさらされて初めて,まともに反省することになる。
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