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バートランド・ラッセル 結婚論 第9章 人生における恋愛の位置 n.5 - Marriage and Morals, 1929, by Bertrand Russell (松下 訳)

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自我の堅い壁を破る恋愛

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 恋愛は、性交への欲求よりもはるかに上のものである。恋愛は、生涯の大部分を通じて、大部分の男女を苦しめる孤独から逃れる主な手段である。大部分の人たちには、冷たい世間や、ありうる群衆の残酷さに対する根深い恐怖が存在している。(また同時に、)愛情への熱望(あこがれ)もある。それは、男性の場合には、しばしば、乱暴、がさつ、またはいばり散らす態度に隠され、女性の場合には、ぶつぶつ小言を言ったり、がみがみ言ったりする態度に隠されている。(男女)相互の情熱的な愛(情)は,それが続くかぎり、このような感情を消滅させる。相互の情熱的な愛は、自我の堅い壁を打ち壊し、二人が一つに解けあった新しい人格を産み出す。自然は、人間が孤独でいるようには作っていない。人間は、もう一人(異性)の支援なしには、自然の生物学的な目的を果たすことができないからである。そうして、文明人は、愛なくしては、自らの性本能を完全に満足させることができない。肉体的(身体的)だけでなく、精神的な、人間の全存在が男女の関係の中に入っていかない限り、この本能は完全には満足されないのである。

Chapter IX: The place of love in human life, n.5

Love is something far more than desire for sexual intercourse; it is the principal means of escape from the loneliness which afflicts most men and women throughout the greater part of their lives. There is a deep-seated fear, in most people, of the cold world and the possible cruelty of the herd ; there is a longing for affection, which is often concealed by roughness, boorishness or a bullying manner in men, and by nagging and scolding in women. Passionate mutual love while it lasts puts an end to this feeling ; it breaks down the hard walls of the ego, producing a new being composed of two in one. Nature did not construct human beings to stand alone, since they cannot fulfil her biological purpose except with the help of another ; and civilized people cannot fully satisfy their sexual instinct without love. The instinct is not completely satisfied unless a man's whole being, mental quite as much as.physical, enters into the relation.
(掲載日:2016.09.0231 /更新日: )