バートランド・ラッセルのポータルサイト牧野力(編)『ラッセル思想辞典』より |
(From: Principles of Social Reconstruction, 1916, chap.2 & 3他) | ||
西欧の少年少女にとって,最も重要な社会的忠誠は,彼らが市民として所属する国家への忠誠であり,国家への義務は政府の命令通りに行動することだ,と教えられる。この教えに疑問を抱かせないように,歴史・政治・経済で偽りを教え,外国の過失は必ず指摘し,自国は善良な「防衛」戦争に立ち上がったと吹き込まれる。自国が戦火を交え,外地を占領するのは,文明を広め,福音を伝えるためだと信じ込ませようと努める。この政策に立脚する国家主義者が願う愛国心を注入するために,民衆のヒステリーや情動性を利用する(例:米国における9.11事件)。これは国家的利益を握る人々が行う,最も恐ろしい現代の悪の源泉である。これは国際関係に精通する人々には,誰にも明白な事実である。 愛国心について教えている多くの人は,知的に誤った指導をしているが,倫理的に見れば,教師自身も誤った教育制度で吹き込まれた通りにオウム返しをしている。愛国心と財政との甚だ緊密な関係に注意しなければならない。愛国心という魅力ある言葉に酔うのでなく,知的に冷静な良心を働かせれば,教育は人類の連帯意識と国際的協力の重要さを自覚するに至るだろう。また,万人をあらゆる不幸と死の恐怖から救えるだろう。 酔いしれていない人々には,国家主義の危険性は明白で,国家主義は人類文化・文明を死へ導く主な力である。 (松下注:挿絵は,ラッセルの The Good Citizen's Alphabet. Gaberbocchus, 1953 より)。 → ★「国家悪」について |