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[質問]
 哲学を勉強したいと思い、哲学科を受験することに決めました。論文形式なのですが、『ラッセル幸福論』が課題図書として定められており、正直難しく感じています。それについての意見を聞かせてください。

[回答]

 ラッセルの『幸福論』が哲学科受験の課題図書に指定されているというのは驚きですが、想像できないことではありません。
 理由としては、(1)「幸福論」であれば誰でも「何か意見がありそう」、あるいは、なくても「何か書けそう」、ということと、(2)ラッセルの幸福論は、世の中にはびこっている、「気の持ちようで不幸にも、幸福にもなる」といった気休め、あるいは精神論中心の「幸福論」ではない、という2つが思いうかびます。
 ラッセルの幸福論は、The Conquest of Happiness, 1930 によって、日本の多くの読者にも知られており、高校生以上であれば、誰でも理解しやすく書かれていますので、読解自体は難しくはないと思われます。難しいといわれるのは、どのような意見を書いたらよいかよくわからない、ということだろうと想像します。

 ところで、現在、ラッセルの The Conquest of Happiness は岩波文庫の1冊として邦訳が出版されていますが、すでにお読みになったでしょうか? 難しいと書かれている以上、読まれていることと思いますが・・・。

 ラッセルは、幸福に生きるためには、幸福をもたらすものは何かということをまず考えるのではなく、「不幸の原因にはどのようなものがあるか」、「それらの不幸を克服するためにはどうすれば良いか」を、最初に論じています。その後、はじめて、「幸福をもたらすものは何か」を論じています。決してその逆ではありません。
 人間の幸福な生き方などというものは、思春期に一時期集中的に考える人は多いですが、通常、年をとればとるほど考えるものであり、幼稚園や小学生はぼんやりと思うことはあっても、論理的にはあまり考えません。ですから、若い人に人間の幸福について意見を言えといっても、年輩の人ほど、気の利いた意見を言えない、というのが普通だろうと思われます。


 求められているのは(=すなわち課題は)、「人間の幸福」というものを'題材にして'、(本当は題材はなんでもよいのだろうと思いますが、先ほどあげた2つの理由で手頃だから「幸福論」を採用)自分の考えをどれだけ論理的に展開できるか、その論理的思考能力を採点しよう、ということだろうと思われます。

 ラッセルの幸福論については、ラッセルのホームページにも、金子光男氏の論文を掲載していますので、参考にしてください。
金子氏さんの論文はちょっと「固い文章」ですが、まねをする必要はありません。自分が納得するところをとりだし、論理的につなぎあわせればそれなりの文章ができあがるはずです。人がどういっているかではなく、自分が納得できるものでないといけませんので、チャレンジしてみてください。