バートランド・ラッセルの名言・警句( Bertrand Russell Quotes )

ラッセル英単語・熟語1500

  彼(プロタゴラス)は主に、「人間は万物の尺度であり、すなわち、存在するものが存在すると判断することも、存在しないものが存在しないと判断することも、個人の主観によって決まる(← そうあるものについては そうあるということの、そうあらぬものどもについては そうあらぬということの(尺度である)」という教義で知られている。 これは、各個人が万物(あらゆるもの)の尺度であり、人が異なる場合、一方が正しくて他方が間違っているという客観的な真理は存在しないことを意味すると解釈される。この教義は本質的に懐疑的であり、おそらく感覚の「欺瞞性」(人間の感覚は騙されやすい性質を持っているという事実)に基づいている。

He (Protagoras)is chiefly noted for his doctrine that "Man is the measure of all things, of things that are that they are, and of things that are not that they are not." This is interpreted as meaning that each man is the measure of all things, and that, when men differ, there is no objective truth in virtue of which one is right and the other wrong. The doctrine is essentially sceptical, and is presumably based on the "deceitfulness" of the senses.
Source: A History of Western Philosophy, 1945.
More info.: https://russell-j.com/cool/HWP_1945.pdf

<寸言>
 「人間は万物の尺度である(Man is the measure of all things)」というのはプロタゴラスの有名な言葉であり、多くの人が教科書で習っているはずです。しかし、それにつづく"..., of things that are that they are, and of things that are not that they are not."という英文はあまり知られていないように思われます。
 信頼できそうなサイトを参照すると、「(人間は万物の尺度である。)(すなわち、)そうあるものについては そうあるということの、そうあらぬものどもについては そうあらぬということの(尺度である)」と訳されています。つまり、そうであるということ、あるいは、そうでないということを判断するのは個々人であり、絶対的な真理や客観的な真理などというものは存在しない、ということを主張していると思われます。
 プロタゴラスがそういった教義を唱えたのは、感覚の「欺瞞性」(人間の感覚は騙されやすい性質を持っているという事実)をよく理解していたからではないか、とラッセルは推測しています。

 なお、この件に関して、ChatGPTと対話してみました。

 ★私の質問  古代ギリシアの哲学者プロタゴラス(Protagoras)の言葉の英語訳「Man is the measure of all things」は有名です。しかし、その後に続く言葉の英訳にはいろいろな形があり、あまり知られているとは言えません。
 次は、バートランド・ラッセル(Bertrand Russell)が A History of Western Philosophy で引用しているものです。その次は、ChatGPTによる(前回の)英語訳及びその日本語訳です。

<<ラッセルのA History of Western Philosophy にでてくる英語訳>>
"Man is the measure of all things, of things that are that they are, and of things that are not that they are not."

<<ChatGPTの英訳例>>
"Of all things the measure is Man, of the things that are that they are, and of things that are not that they are not."

<<ChatGPTによる日本語訳>>
「全てのものの尺度は人間である。ありあるものがありあることを尺度とし、ありないものがありないことを尺度とする。」

 このChatGPTによる日本語訳なかの「ありあるものがありあることを尺度とし、ありないものがありないことを尺度とする。」は、何を言おうとしているか、よく意味がとれません。
 「of the things that are that they are」に出てくる2つの「that」のうちの、最初の「that」は「the measure」であると解釈しているのでしょうか?(つまり、of the things the measure are that they are)
 それとも、言い換えると、「「存在するものが存在する」ということも、「存在しないものは存在しない」という判断基準(尺度)も個々人である」ということであり、「that」は単なる接続詞でしょうか? もっと意味の通る、わかりやすい日本語訳をお願いします。

★ChatGPTによる回答
 プロタゴラスの言葉の意味は、人間が全てのものの尺度であり、存在するものが存在すると判断することも、存在しないものが存在しないと判断することも、個人の主観によって決まるということです。
 以下は、より明確な日本語訳例です。

「人間こそが万物の尺度であり、存在するものが存在すると判断することも、存在しないものが存在しないと判断することも、全て個人の主観によって決まる。」

★私の質問2
 それなら、2つ that はこの文でどのような役割をはたしているのでしょうか?

★ChatGPTによる回答2
"Of all things the measure is Man, of the things that are that they are, and of things that are not that they are not" という文で、2つの "that" はそれぞれ、以下のような役割を持っています。

"of the things that are that they are": これは、人間が存在するものを尺度とするという意味で、"that they are" は「存在する」という意味のある句動詞です(← これはChatGPT のひどい間違い! 単なる句にすぎません。)。
"of things that are not that they are not": これは、人間が存在しないものを尺度とするという意味で、"that they are not" は「存在しない」という意味のある句動詞です。  つまり、この文は、「人間こそが全てのものの尺度であり、存在するものは存在し、存在しないものは存在しないということを、人間が判断する」ということを言っているわけです。

★私の質問3
 ということは、前回いただいたChatGPTの訳「「・・・。ありあるものがありあることを尺度とし、ありないものがありないことを尺度とする。」は誤訳と考えてよいでしょうか?

★私の質問3
 はい、前回のChatGPTの訳は、厳密な意味で誤訳と言えます。"Of all things the measure is Man, of the things that are that they are, and of things that are not that they are not" の文で、最初の "that" は「存在するもの」を指しており、2番目の "that" は「存在しないもの」を指しています。つまり、この文は「人間は、存在するものも、存在しないものも、それらがあると判断されるものについての尺度である」という意味です。

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