本書のなかで,私は社会科学の根本概念は「権力」であることを証明したいと思っている(be concerned to prove 証明することに関心を持っている)。それは「エネルギー」が物理学の根本概念であるのと同じ意味でのことである。エネルギーと同様に権力には多くの形態がある。たとえば,富とか,軍備とか,文官の権力(や権威)(civil authority )とか,世論に及ぼす影響力といったものである。これらいずれの権力も他のいずれの権力に従属していると見ることはできず,また他の権力がある権力から派生するということもない。一つの形態の権力だけを,たとえば富という権力(だけ)を,孤立して扱おうとする試みは部分的にしかうまくいかない。それは,他の形態のエネルギーも考慮に入れなければ,一つの形態のエネルギーの研究(調査)(だけ)では何らかの点で欠点が出てくるだろうというのと丁度同じである。
In the course of this book I shall be concerned to prove that the fundamental concept in social science is Power, in the same sense in which Energy is the fundamental concept in physics. Like energy, power has many forms, such as wealth, armaments, civil authority, influence on opinion. No one of these can be regarded as subordinate to any other, and there is no one form from which the others are derivative. The attempt to treat one form of power, say wealth, in isolation, can only be partially successful, just as the study of one form of energy will be defective at certain points, unless other forms are taken into account.
情報源: Power, 1938.
詳細情報:https://russell-j.com/beginner/POWER01_060.HTM
<寸言>
資本主義国では富(金銭)を過大評価し,独裁国では軍事力を、共産主義国では軍事力や官僚体制を過大評価しすぎる。