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★「快適系 ミウラ式B」 『朝日新聞』2005年5月17日朝刊(生活面) 健康食品の最大の醍醐味は、「文化」である。 つまり何というか、製品名を適当に挙げてみますと……『精媚胆』『快歓精』『龍虎春』『驚精雄凛』……こんなタイトル(天狗や雷神のいる外箱がまたカラフル!)を突きつけられちゃ平静でいられない。『糖減驚』『楽泉快』『五貴源』『尊厳大王』……そう、漢字で畳み掛けられると私ゃ弱いのです。漢字三文字、四文字モノ見つけたら即購入、消費後の空箱は大切に保存する。これらを文化財と言わずして何を文化と言おうか。 宝仙堂の『凄十』の箱には「芯からみなぎる」。井藤漢方製薬の『極』には「ググッとのびる時間と飛距離」。 じかに効能を誇ると摘発されかねないのがこの業界。そこで暗示・象徴的な、買い手が自ら想像力で補ってくれそうな曖昧コピーで勝負をかける。アピール度と危険度とのバランスをかいくぐってゆく細心の戦略。勇猛剛胆デザインとの対照が面白い。これを文化と言わずして何を文化と言おう。 「男の自信が復活します!」「あなたの尊厳を取り戻す!」 ひと昔前っぽい叱咤激励が躍る躍る。なるほど「自信」「尊厳」ならいくら強調しても薬事法には触れまい。男はしょせん男だものな。文明の本音が迸ってるというか、ホンネって勇ましくて物悲しいなというか、そう、強壮剤産業では、文化のエキスも売っているのだ。 |