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バートランド・ラッセルのポータルサイト

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 (週刊)バートランド・ラッセル(1872.5.18-1970.2.2)に関するメール・マガジン
  no.0667_2020/01/11 (2006/12/21 創刊/毎週土曜 or 日曜日 発行)

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     ■ 目 次 ■
          
(1)ラッセルの著書及び発言等からの引用
(2)ラッセルに関する記述や発言等
 編集後記

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(1) ラッセルの著書や発言等から
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 ◆ メルマガの発行を再開します。本年もよろしくお願いします。◆
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■「(ほぼ日刊)ラッセルの言葉366」
      n.1775〜n.1779を発行しました。

(1) ラッセル『私の哲学の発展』第10章「ヴィトゲンシュタインの衝撃」n.9
   『ラッセルの言葉366』n.1778 (2020年01月08日 水曜日)

(ウィトゲンシュタインは言う。)「大雑把に言えば、2つのものについて、
それらは同一であると言うことは無意味であり、一つの物について、それがそ
れ自身と同一であると言うことは何も言わないことである」(『論考』5.5302
 および 5.5303)。一時、私はこの批評を受けいれたが、間もなくこの批評は
数学的論理学(記号論理学)を不可能にするものであり、かつ、事実、ウィト
ゲンシュタインの批評は正しくない(invalid 有効でない)という結論に達し
た。このことは、数えるということ(counting)を考察すれば特に明らかにな
る。もし a と b とがその全ての特性を共有しているならば、a のことを言う
とき同時にbのことも言わざるをえないのであり、あるいは言い換えれば(or)
 a を数えるとき同時に b も数えざるをえないのであり、それは a を数える
ことと b を数えることとは別のことでなく、同一の数える行為である。だか
ら、a と b とが二つのものであることを恐らく(conceivably 考えられると
ころでは)決して発見しえないであろう。ウィトゲンシュタインの立場は、異
他性(diversity 多様性)を定義不可能な関係であることを仮定している。も
っとも彼自身この仮定をしていることに気づいていたとは私は思わないが
(although)。しかしもし彼がこの仮定をしていないとしたら、いかなる根拠
によって彼が「二つの対象がその全ての特性を共通に持つ」という命題を(彼
が言うように)有意味と主張できるのか理解できない(しかもかれは実際そう
だと主張しているのである)。けれども、もし異他性(diversity)を認める
と、其の場合には、a と b とが二つのものであるとすると、aは b が持って
いない特性をもっている、即ち、「 b とは異なっている」(being diverse
from b)という特性をもつ(ことになる)(訳注:従って、a と b とは全て
の性質を共通に持っているわけではないことになる)。従って、同一性につい
てのウィトゲンシュタインの議論は誤まっている、と私は考える。そしてもし
そうなら、彼の体系の大きな部分が正しくないことになる(invalidate 無効
化する)。

Chapter 10 The Impact of Wittgenstein, n.9

'Roughly speaking: to say of two things that they are identical is 
nonsense, and to say of one thing that it is identical with itself is
 to say nothing’ [Tractatus, 5.5302 and 5.5303). At one time I 
accepted this criticism, but I soon came to the conclusion that it 
made mathematical logic impossible and, in fact, that Wittgenstein's
 criticism is invalid. This appears especially if we consider 
counting: if a and b have all their properties in common, you can 
never mention a without mentioning b or count a without at the same
 time counting b, not as a separate item but in the same act of 
counting. You could, therefore, never conceivably discover that a and
 b were two. Wittgenstein's position assumes that diversity is an 
indefinable relation, although I do not think that he knew he was 
making this assumption. But if he is not making it, I do not see on
 what grounds he can say, as he does, that it is significant to say 
that two objects have all their properties in common. If, however, 
diversity is admitted, then, if a and b are two, a has a property 
which b has not, namely, that of being diverse from b. I think, 
therefore, that Wittgenstein's contention as to identity is mistaken.
 And, if so, it invalidates a large part of his system.
   Source: My Philosophical Development, chap. 10:1959.
  More info.:https://russell-j.com/beginner/BR_MPD_10-090.HTM

(2) 「犯罪への興味」(『アメリカン・エッセイ集』)から

 https://russell-j.com/CRIME-I.HTM

 ・・・前略・・・。
 センセーショナルな犯罪への世間一般の(普遍的)興味の理由はあまりはっ
きりしないが,それは2つの要素から成っていると私は思う。1つは狩猟(ハン
ト)の喜びであり,もう1つは殺人を犯したいがあえて実行することができない
人々の,心の中での'空想的発散'である。狩猟(ハント)の喜びは,人間性のなか
で,大部分の人が認めるよりも,ずっと強力な要素であると私は思う。即ち,狩
猟の喜びは,民衆の道徳的怒りの発散において,その役割を果たしている。ボル
ネオの'首狩り族'の間では,(人間に対する)狩猟はいかなる道徳的言い訳の
必要なしに満足させられているのに対し,文明化された人々は,高潔な倫理感情
の衣裳でおおわずには,自分の'低俗な感情'の耽溺を愉しむことができない。
殺人者に対して首狩り族と同じ野蛮な衝動を解放する時には,民衆はそれを野
蛮とも邪悪とも感ぜずに,自分を徳性と善良な市民意識の持主だと信ずる。

The reason for the universal interest in sensational crime is a little
 obscure. I think it is made up of two parts: one is the pleasure of 
the hunt, and the other the imaginative release in the minds of those 
who would like to commit murders but dare not. I am afraid the 
pleasure of the hunt is a stronger element in human nature than most
 people are willing to recognise: it plays its part in all popular 
outbursts of moral indignation. Among the head-hunters of Borneo it is
 indulged without the need of any moral claptrap, but civilised people
 cannot adequately enjoy the indulgence of their baser passions until
 they have cloaked them in a garment of lofty ethical sentiments. When
 people let loose upon a murderer the savage impulses of the 
head-hunter, they feel neither savage nor wicked but believe 
themselves to be upholders of virtue and good citizenship.

 ・・・中略・・・。
 この観点からみて,探偵小説は有益な機能を果たす。法律を遵守する一般市
民の空想上の満足の点では,本(小説)の中での殺人は実際の殺人とほとんど
同等の役割を果たす。私の知的な友人たちは,−−その多くが探偵小説の熱烈
な読者であるが−−,探偵小説の興味の理由は筋書と探偵(推理)の巧妙さ(独
創性)だとはっきりと言う。しかし私は,それは間違っていると思う。我々は,
作品の根本的目的への本能的関心をまったく持てないのであれば,その作品の
芸術的出来ばえを完全に愉しむことはない。この上なく巧妙な犯罪の物語の場
合であっても,我々がその面白さを十分愉しむためには,犯人か探偵のどちらか
が,我々の情緒に訴えかけなければならない。従って,我々が外的行動のみなら
ず,無意識な行動においても有徳になれば,探偵小説への興味は消滅するものと
思われる。ただし,我々が生きている間にこの種の変化が起ることはなさそう
であるので,現在・探偵小説を執筆して生計をたてている者が無用な心配に駆
られる必要はない。 

From this point of view detective stories fulfil a useful function. 
For the imaginative satisfaction of the ordinary law-abiding citizen,
 a murder in a book will do almost as well as a real murder. My 
intellectual friends, most of whom are passionate readers of detective
 stories, assure me that what they like is the ingenuity of the plot
 and the detection. But I think they are mistaken in this. We do not 
thoroughly enjoy the artistic execution of a performance if we have no
 instinctive interest in its fundamental purpose. Either the murderer
 or the detective must make some appeal to our emotions if we are to 
enjoy to the full even the most ingenious story of crime. When we all
 become as virtuous in our unconscious as we are in our outward 
behaviour, I think the interest in detective stories will cease. 
Meanwhile those who make a living by writing them need not feel any
 undue alarm, as the change is not likely to be brought about in our
 life-time. 


■「(ほぼ日刊)ラッセルの英語」
      n.1732〜1736を発行しました。ひとつだけ再掲します。
      n.1734 (2020年01月08日)
  
 最所フミ(編著)『日英語表現辞典』(ちくま学芸文庫,2004年1月)を参考に
した「ラッセルの英語_日英語表現辞典シリーズ」(通称 R日英表現)です。

★ demoralize / degrade / debase / deteriorate / degenerate / corrupt
 / depraved (pp.063-065)

  https://russell-j.com/beginner/r_nichieigo_hyogen_d02.htm

(1) "demoralize": 人間をひどい目にあわせて自尊心を失わせ、気力をそぐこ
とで、「被害者意識」を持った言葉。
Money worries are demoralizing.(お金の心配があると気力がなくなる。)
Wasted effort throughly demoralized the whole staff.(働いても結果が少
しも上がらないので、社員はすっかり意気消沈した。)

(2) "degrade": 比喩的に使われることが多く、世間の尊敬を失うことからく
る「成り下がり」の状態を表す。
He had degraded his office by shameless extortion.(彼はひどい汚職をし
た。)

(3) "debase": "degrade"と意味が似ているが、"debase"の方は、同じ低下で
も、「格下げ」でなく「本質的な価値の低下」という含みがある。
Currency debased by inflation.(インフレで通貨の価値が下がった。)

(4) "deteriorate": 「悪くなる」「退歩する」「衰える」といった意味が元
になっていて、道徳的な判断を必ずしも含まない。
Conversation deteriorated.(<はじめは理路整然として立派な> 会談が、
しだいにつまらない話になっていった。)
The weather deteriorated during the night.(夜のうちに天気が悪くなっ
た。)

(5) "degenerate": (その人なり事物なりの本来ある姿から)「堕落する」
「転落する」ことを表す言葉であるが、"degenerate habits" のように最初か
ら腐敗した状態を指す場合が多い。

(6) "corrupt": 通例は、身分の高い人たちの「腐敗」を指し、外見ではわか
らないが実は腐敗している状態によく使われる。

(7) "depraved": "depraved sadist" のように意識的に悪の道を選ぶ変質者の
感じを出した言葉で、道徳的に酌量の余地のない非難語。

 R英単語・熟語集の用例とはできるだけ重複しないようにしますが、用例が
少ない場合はどうしても重複してしまいます。あしからず。


A.ラッセルの著作における用例
 
<用例1> The risk of disease in itself renders prostitution a 
dangerous trade like working in white lead, but apart from that the
 life is a demoralizing one.
[病気の危険それだけでも、売春は、白煙(whie lead 塩基性炭酸塩のこと/
白色顔料として使用)を使う仕事のように危険な商売(職業)になる。しかし
、そのことを別にしても、その生活は、人間の士気をそぐ(生活を堕落させる)
ものである。]
 出典:ラッセル『結婚論』第11章「売春」
     https://russell-j.com/beginner/MM11-060.HTM

<用例2>
Among those that I regard as harmful and degrading I include such 
things as drunkenness and drugs, of which the purpose is to destroy
 thought, at least for the time being.
[私が有害かつ人を堕落させると思っている'気晴らし'の中には,'泥酔'や'麻
薬'が含まれている。両者の目的は,少なくとも当面,思考をなくす(消滅させ
る)ことにある。]
 出典:ラッセル『幸福論』第15章「 非個人的な興味」
     https://russell-j.com/beginner/HA26-050.HTM

<用例3> When you hear people in church debasing themselves and 
saying that they are miserable sinners, and all the rest of it, it 
seems contemptible and not worthy of self-respecting human beings. .
[教会で人々が自らへりくだり(品位を落とし),自分たちは惨めな罪人であ
るとか,そういったようなことをいうのを聞く時,それは軽蔑すべきものであ
り,自尊心のある人間にはふさわしくないように思われます。]
 出典:ラッセル「なぜ私はキリスト教徒ではないか?」
     https://russell-j.com/BR_RELIG.HTM

<用例4> The deterioration in living conditions must be expected to
 produce increasing discontent and increasing envy of the more
 prosperous parts of the world.
[生活条件の悪化は、不満を増大させ、世界の繁栄している地域をうらやむ気
持ちを高めることになる(高めざるを得ない)。]
 出典:ラッセル「人口圧迫と戦争」
     https://russell-j.com/beginner/JINKO-S.HTM

<用例5> Revolutionary power, as the case of Napoleon shows, is very
 apt to degenerate into naked power.
[革命的な権力(革命をめざす権力)は,ナポレオンの事例が示しているよう
に,むきだしの権力にしばしば堕落して行きがちである。]
 出典:ラッセル『権力−新しい社会分析』第7章「革命的な権力」
     https://russell-j.com/beginner/POWER07_190.HTM

<用例6> The corporation lawyer, the corrupt politician, and the 
popular psychiatrist are expected to utter moral sentiments with 
profound earnestness and great frequency, but in return for this hard
 work, they are allowed a suitable remuneration.
[企業の顧問弁護士,腐敗した政治家や人気のある精神科医は,ごく真面目に道
徳的な感想(や意見)を頻繁に述べなければならないが,こういった困難な仕
事の見返りに,彼らはそれ相応の報酬が与えられる。]
 出典:ラッセル『アメリカン・エッセイ』の中の「教化・善導について」
     https://russell-j.com/EDIFY.HTM

<用例7> According to his conversation, no human beings in the whole
 previous history of the human race had ever been quite so depraved as
 the Esperantists.
[彼の話によれば,人類の全歴史を通して,エスペランティストほど堕落した人
間はなかった。]
 出典:ラッセル『自伝』第1巻第5章「初婚
     https://russell-j.com/beginner/reitan-l022.htm


B.他の参考例

<参考例1>
After months of inactivity the army was completely demoralized.
 出典:Longman Dictionary of Contemporary English, new ed.


<参考例2>
This advertisement degades women.
[この広告は女性の品位を落とすものだ。]
 出典:『英単語ターゲット1900』, p.379

<参考例3>
You must not debase yourself with such stupid behavior.
[そのような愚かな行動をして品位を落としてはいけない。]
 出典:『新版完全征服データベース5500 合格 英単語・熟語』, p.281

<参考例4>
Relations between the two countries continued to deterioare.
[両国の関係は悪化し続けた。]
 出典:『英単語ターゲット1900』, p.379

<参考例5>
It was very degenerating to be punishing in front of the whole class.
 出典:Longman Dictionary of Contemporary English, new ed.

<参考例6>
She blamed him for corrupting her daughter.
[娘を堕落させたことで彼女は彼を責めた。]
 出典:『英単語ターゲット1900』, p.379

<参考例7>
It has been condemned as the most disturbing and depvaved film of its 
kind.
 出典:Collins COBUILD English Dictionary for Advanced Learners, new
 ed.


★「ラッセルの言葉(Word Press 版)v.2, n.1476〜1480

1)n.1476:R『権力−その歴史と心理』第12章 権力と統治形態 N.8
       https://russell-j.com/wp/?p=5146
         
2)n.1477: R『権力−その歴史と心理』第12章 権力と統治形態 N.9
      https://russell-j.com/wp/?p=5150

3)n.1478: R『権力−その歴史と心理』第12章 権力と統治形態 N.10
          https://russell-j.com/wp/?p=5153

 * N.11 は中身があまりないのでスキップします。

4)n.1479: R『権力−その歴史と心理』第12章 権力と統治形態 N.12
       https://russell-j.com/wp/?p=5157

 君主政体(君主制)の持つ欠点でもっと重大なものは,臣民(subjects 国
民)の利害と王の利害とが一致する場合は別として,通常,君主政体において
は臣民の利害に対して無関心であるということ(事実)である。(両者の)利
害の一致はある点まではありそうである。王(King 君主)という者は,国内の
無政府状態を鏡圧することに関心をもっているので,従って,無政府状態の危
険が大きい場合にはいつも,臣民のなかの法律を遵守する人々(law-abiding 
section)の支持を受けるであろう。王(君主)は臣民が豊かになることに関
心を持つが,それはそのほうが税をより多く徴収できるからである。外国との
戦争においては,王(君主)と臣民の利害は,王(君主)が勝利する限り,一
致していると考えられる。王(君主)が自分の版図を拡大し続ける限り,側近
者集団は −王(君主)は彼らにとって支配者というよりもむしろ指導者であ
る− 王(君主)の軍務(service)を有益であると思うであろう。しかし,王
(君主)は2つの原因で誤った道に導かれれる(lead astray)。一つは高慢
(pride うぬぼれ)であり,もう一は側近者集団が(既に)支配力(power of
 commnad)を失っているのに彼らに頼ることである。高慢(うぬぼれ)に関し
ては,エジプト人は(多くの)ビラミッドの建設(の命令)に堪えたけれども
,フランス人はついいにはヴェルサイユ宮殿とルーヴル王宮(の贅沢さ)に不
平を鳴らし,モラリストたちは常に宮廷の贅沢さに対して痛烈な非難を加え続
け,「酒(ワイン)は邪悪だ,女は(も)邪悪だ,王は(も)邪悪だ」と,ア
ポクリファ(注:Apocrypha ユダヤ教・キリスト教関係の文書の中で,聖書の
正典に加えられなかった文書)は我々に語っている。

Chapter XI: Powers and Forms of Government, n.12 A still more serious 
disadvantage of monarchy is the fact that it is usually indifferent to
 the interests of subjects, except when they are identical with those 
of the king. Identity of interest is likely to exist up to a point. 
The king has an interest in suppressing internal anarchy, and will 
therefore be supported by the law-abiding section of his subjects 
whenever the danger of anarchy is great. He has an interest in the 
wealth of his subjects, since it makes the taxes more productive. 
In foreign war, the interests of the king and his subjects will be 
thought to be identical so long as he is victorious. So long as he 
continues to extend his dominions, the inner group, to whom he is a
 leader rather than a master, will find his service profitable. But 
kings are led astray by two causes: pride, and reliance upon an inner
 group which has lost its power of command. As for pride : though the
Egyptians endured the Pyramids, the French, in the end, grumbled about
 Versailles and the Louvre ; and moralists have always inveighed 
against the luxury of courts. “Wine is wicked, women are wicked, the
 king is wicked,” we are told in the Apocrypha.
 出典: Power, 1938.
 詳細情報:https://russell-j.com/beginner/POWER12_120.HTM
 
4)n.1480: R『権力−その歴史と心理』第12章 権力と統治形態 N.13
       https://russell-j.com/wp/?p=5160
     

★「ラッセルの言葉_画像版」

 日本語 version : n.1154j-1167j を投稿
 英 語 version : n.1147e-1167e を投稿

  一つだけ再録します n.1157j (Jan. 1, 2020)
      https://russell-j.com/smart_r366/r366g_j1157.html

 「空想と事実の区別」

 子供は空想が純粋(な空想)でありさえすれば,つまりそれが現実の姿であ
る振りをしないかぎりその空想を愉しむ。しかし,子供たちは空想と事実とを
はっきり区別している。したがって美しい童話を,それが事実であるかのよう
に子供に提示する者は,子供たちがそのゴマカシを見破るやいなや,彼らの憤
激を買う。・・・。子供は'ごまかし'を嫌うが,通常,そのような気持ちは年
をとれば消滅する。(従って)子供に不快な真実を知らせない慣行は,決して
大人たちが考えるように子供たちのために採用されたのでない。それは大人
にとって卒直さが苦痛であるがゆえに採用されるのである。

Children enjoy fancy when it is pure, that is to say, when it makes
 no pretence to be reality, but they distinguish sharply between 
fancy and fact. The person who offers them pretty fairy tales as if
 they were fact rouses their indignation as soon as they find out the
 trick that has been played on them.... They have a dislike of humbug,
 which usually disappears in later life. The habit of screening them
 from the knowledge of disagreeable truths is not adopted for their
 sakes although adults may think it is; it is adopted because adults
 themselves find candour painful.
 Source: On Protecting Children from Reality, by Bertrand Russell
 More info.: https://russell-j.com/CHILD-P.HTM

<寸言>
 子供は長いスパンで物をみることができないが、大人はそれができると言わ
れる。しかし、実際は、大人は目先のことや短期間のことを考え、子供は論理
的には間違った推理を行うことが大いにしても直感的に自分たちが将来不幸な
目にあうことをさけようとする。気候問題もそうではないか? 経済的な利益
を考え、徐々に対策をうつのが現実的と考えるが、敏感な若者は将来に対する
不安を感じ、大人は無責任(短期的なことしか考えていない)と感じる。


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(2) ラッセルに関する記述や発言等 
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★ R落ち穂拾い−初級篇
 1)(読売新聞コラム)「塩谷信幸「幸せをもたらすのは熱中…定年退職後に新
    しい分野を」(2019.12.24)
 https://russell-j.com/beginner/ochibo-2019.htm
 https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20191128-OYTET50018/

* 塩谷信幸(1931年12月14日- ):医師で。北里大学名誉教授。NPO法人アン
 チエイジングネットワーク理事長

 あいかわらず、とりあげられるラッセルの著書は『幸福論』ばかりで、この
読売のコラムも同様です。 少し残念ではありますが、良い本であることには
変わりはありません。

「数学者でノーベル賞受賞者でもあるバートランド・ラッセルには色々な著作
がありますが、中でも「幸福論」は一般の方にも人気がある本の一つで、内容
は全て「心のアンチエイジング」に通じるものがあります。そして、ラッセル
が「幸せをもたらすもの」の一つとしてまず挙げている言葉が「熱意」です。
ですが、よく読むと、むしろ「熱中」と言ったほうが良いかもしれません。
周りのことはすっかり忘れ、ある一つのことに夢中になった状態ですね。」
 ・・・以下略・・・

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 編集後記 本年もよろしくお願いします。最後の発行です。
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 本号は週刊版の本年最初の発行です。本年もよろしくお願いいたします。

 新年早々、トランプ大統領による(イラン革命防衛隊の)ソレイマニ司令官
殺害命令を実行することによって中東で一触即発の事態が発生しました。従来
からトランプ大統領は米国が海外に支払う対外軍事費を減らしたい、アフガン
などからも米軍を撤退したいと言っていました。しかし、それを裏切る行為に
出ました。

 どうやら司令官殺害は、大統領再選にプラスになると判断して実行したとこ
ろ、イラン国民の反発の大きさに驚き、「戦争は望まない」と声明を発表せざ
るを得なくなったようです。

 イランも米国と戦って勝てるはずはないと思っているので、両者の思いは一
致し、両国の戦争に発展することはなさそうですが、イランとしては自国の英
雄が殺害され、イラクへのロケット攻撃だけで満足できるはずはありません。

 正面で戦えなければテロに訴えるしかないと考える者は必ずでてきます。
イランが国家としてやらないとしても、イラン・シンパの人たちや、家族が米
軍によって(空爆などで)殺害された人たちが、中東の米軍基地に対して、ま
た米国内においてテロを実行する可能性が増大しました。テロ対策をしっかり
しないといけないと言いながら、テロリストを増やす政策を多くの大国(中国
やロシアも含む)がやっています。

 今年もトランプ他の権力者によって世界がかき回されそうです。 松下彰良          
 ★松下彰良(訳・編)『ラッセルの言葉366』
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■編集・発行:(松下彰良/まつした・あきよし)
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