アドホック・エッセイ&備忘録(2008年05月06日)
グーグル批判の書:吉本敏洋(著)『グーグル八分とは何か』(九天社,2007年1月刊)
グーグル(Google)を擁護する本ばかり読んでいるので,バランスをとる意味で,グーグルを批判している本(吉本敏洋(著)『グーグル八分とは何か』(九天社,2007年1月刊))を1冊読んでみた。(松下注:「村八分」が葬式と死体処理の二分以外社会から抹殺することを意味するのと同様,「グーグル八分」というのは, グーグルの検索エンジンにひっかからなくしたり,ひっかかっても順位をずっと後ろにしてしまう行為を言う。グーグルはそのようなことはやっていないと公言してきたが,中国政府の要請を受け,天安門事件など,中国政府を批判しているページは,中国国内では表示しない措置をとっているというのは周知の事実となっている。)アメリカにおいても,グーグルの検索エンジンのシェアは2000年6月には1%に過ぎなかったが,2002年後半には米国ヤフーを抜いてトップに踊りでている。検索エンジンとしては,現在,世界ではグーグルがヤフーをかなり引き離して断然トップであるが,日本ではヤフーの後塵を拝している。だが日本においてもグーグルがヤフーを抜くのは時間の問題だと思われる。
現在では誰もが知っているグーグルであるが,1998年にスタンフォード大学の院生のラリー・ページとサーゲイ・ブリンによって創立されてまもない頃は,グーグルの検索エンジンをヤフーやエキサイトに売り込んだが最初の1年間はまったく相手にされなかったという。当時の米国ヤフーの経営陣も,先見の明がなかったことになる。
吉本氏がこの本を書くことになった動機は,吉本氏が運営している「悪徳商法?マニアックス」(悪徳商法を実名入りで公表しているサイト: https://www6.big.or.jp/~beyond/akutoku/ )が「グーグル八分」になったことによる。即ち,吉本氏が「悪徳商法?マニアックス」のページで(株)ウェディングの悪徳商法の批判を続けるうちに,グーグルで「ウェディング」をキーワードにして検索すると(株)ウェディングがトップに,2番目に「悪徳商法?マニアックス」のページが表示されるようになった。そこで(株)ウェディング(現・セリュックスラヴァー・ウェディング株式会社)がグーグル社に文句をいい,それを受けて,グーグルが何らかの処置(吉本氏はそれを「グーグル八分」と呼称)をしたことにより,「悪徳商法?」の特定のページ(ウェディングを批判したページなど)が表示されなくなってしまった(あるいは上位に表示されなくなってしまった)そうである。
[グーグルからの返事]
●プロセスは完全に自動化されており,グーグル社によって,検索対象から落としたり,恣意的に順位を操作したりはしていない。
↓(中国版グーグルで苦渋の決断をして以降,下記のように説明を変更)
●特定のコンテンツが日本の法律に違反していると判断された場合,そのページを Google.co.jp から削除することがあります。この度,ご指摘のあったページは,日本の法律上,名誉毀損罪および営業妨害罪法に該当すると判断され,Google.co.jp 及び弊社パートナーサイトから削除させていただきました。
[その後]
●(株)ウェディングは2004年2月に6,000万円の損害賠償を求め,名誉毀損で吉本氏を訴える。それとともに,京都府警五条署が吉本氏の自宅を家宅捜索
・消費者問題に詳しい紀藤正樹弁護士らが中心となって,「ウェディング問題を考える会」設立
●あわてた(株)ウェディングは訴訟とりさげ
[グーグルが語る「グーグル八分」]
●中国語版グーグルについては,苦渋の決断をした。(世界人口の1/5をしめる中国の人々がグーグルを全く使えないよりは,制限されていても使えるほうがよいと判断した。)
●グーグルが情報の削除を行う3つのケース
-1.「犯罪にからむサイト」:児童ポルノ,麻薬販売,テロリズム礼賛,架空口座販売等のサイト
-2.「スパム的な手法によって検索順位をあげようとしているサイト」:キーワードを背景色と同じ色のフォントで埋め込んでおくサイト等
-3.「個人や法人から,'このサイトは自分の権利(著作権や名誉)を侵害している'というクレームがあったサイト」
●(全世界グーグル八分)日本の法律に抵触しないものでも,「アメリカの法律に抵触するページあるいはサイト(=万国共通の犯罪に絡むページあるいはサイトと認定されるとのこと)」(例:日本では写真は児童ポルノの対象となるが漫画は対象とならない。しかし,米国では対象となるので,(グーグルの検索エンジンでは)全世界に適用される。
言うまでもなく,個人を誹謗中傷したり,犯罪にからむ情報発信をするサイトなどは制限を受けなければならないが,それ以外は,インターネットにあっては,可能な限り,表現の自由は認められなければならない。
本書では,「グーグル八分」の様々な事例が紹介されているが省略。興味のある方はご一読ください。