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「ラッセル氏壇上に起ち経済革命を叫ぶ−
文明の為に私有財産制度と国家主義を撲滅せねばならぬと
『読売新聞』1921年(大正10年)7月29日朝刊第7面
慶應義塾大学大講堂
 ラッセル教授は着京以来なかなかの元気で、昨夜午後6時から慶應義塾の大講堂(右写真)で帆足理一郎(松下注:早稲田大学教授。明治14年11月5日生。南カリフォルニア大卒後シカゴ大大学院神学科に学ぶ)の通訳で「文明の再建」と題して講演会を開いた。定刻前既に満員の盛況で、名士の連中も多かった。氏はステッキに助けられながら登壇した。半ば不安そうかブラック嬢の眼が優しく光る。氏はやがて、「病中、充分な意見を発表することが出来ぬが最善を尽して諸君の好意に酬いたい」と冒頭して開口一番、「文明とは決して機械工業の発達や広告を巧くして金を儲ける現代の文明ではない」と説き、国家と国家とは愈々毒牙を磨いて殺人機械たる軍備の拡張に腐心している」と喝破して更に、「吾人は当来のよりよき文明を何処までも阻止しようとるする私有財産制度と国家主義とを飽く迄も撲滅しなければならぬ。其の唯一の解決法として一大経済革命を起こさなければならぬ。共同活動の観念の下には労働者も資本家もない。為政者や被治者もない。男性も女性もない」と、約1時間に亘って雄弁を揮った。
(参考)帆足理一郎邸はなぜ斜め? [気になる下落合]