[紹介] 吉田夏彦「バートランド・ラッセル(著)『物質の分析』(The Analysis of Matter, 1927)
* 出典:『世界名著大事典』第5巻(平凡社, 1960年11月刊)pp.337-338.ラッセル(Bertrand Russell, 1872- [1970])著 。著者はイギリスの哲学者。本書は当時の理論物理学の諸成果が哲学にどのような帰結をもたらすかを調べることを目的としたもので,その内容の一部は,1926年,ケンブリッジ(大学)で講ぜられた。『精神の分析』(The Analysis of Matter, 1921)と一応対応をなし,立場も中立的一元論のそれに近いが,前著とはややずれているところもある。
全体は3部にわかれる。第一部は,相対性理論や量子論(量子力学)にからまる諸問題を,数学との交渉を念頭におきながら分析し,「物理学の論理的分析」と題されている。第二部「物理学と知覚」は,物理学理論と知覚の世界との関係を取り扱う。第三部「物理的世界の構造」では,物理学のさまざまな基本概念を,より基本的な「事件」の概念から構成することを試みる。
本書は長く絶版であったが,1954年,Lester E. Denonn の紹介で再刊された。