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* パグウォシュ会議: 1955年,英国の哲学者バートランド・ラッセル博士と物理学者アルバート・アインシュタイン博士らが世界の科学者に向けて「核兵器が人類の存続に対する脅威となっている」と警告するラッセル=アインシュタイン宣言を出した。1957年,カナダのパグウォシュ村で第一回会議が開かれ,日本からはノーベル賞受賞者の湯川秀樹博士や朝永振一郎博士らが出席した。(いずれも故人)
第一回パグウォシュ会議の参加者たち:日本からは小川岩雄(左端),朝永振一郎(左から4人目,湯川秀樹(写真には入っていない)の物理学者3氏が出席した。
<1957年,カナダのパグウォシュ村で>
原産会議・電事連,費用を援助
科学者側:利害に絡み抵抗感ある
開催者側:ひもつきのカネと違う
総会は(1995年7月)24日から29日まで,広島国際会議場で開かれる。広島,長崎の被爆50年にあたることから,年次会議としては初めて日本が開催地に選ばれた。「核兵器廃絶の世界を目指して」をテーマに,約45ヵ国から200人近くの科学者が参加し,論議する。
関係者によると,同会議の日本側事務局は,昨年9月ごろから募金委員会を発足,地元自治体や財団,産業界など,幅広く呼びかけた。
総額で5,000万円程度と言われる開催費用のうち,原産会議は「2,000万程度の応援」といい,電事連は「応分の協力」としている。
今度の会議では,全体会議のほか,テーマごとに作業グループに分かれて非公開の討論が行われる。「エネルギー・環境・開発の相互関連」といった,原子力産業界の利害そのものに深くかかわってくるテーマもある。
このため,研究者の中から「商業発電から得られたプルトニウムでも核爆弾は作れる。原発関係団体からの資金援助には疑問を感じる」との声も聞かれる。
今回のパグウォシュ会議組織委員長の小沼通二・慶應大学教授は「広島会議ではプルトニウム利用の問題はテーマとして当然です。だからそういうテーマの議論は困るというようなお金はもらわない。今回はひもがついていないからもらった」と話す。
森一久(日本原子力産業会議専務理事)の話: 昨年,被爆地の広島で初めて開いた原産会議の年次大会で,核兵器廃絶を訴える「広島宣言」を出した。パグウォシュ会議への応援はそうした流れからで,問題はないと思う。
電機事業連合会広報部の話: 権威ある科学者たちの世界会議に協力しただけ。
日本平和学会元会長の岡本三夫氏(広島修道大学教授)の話: 核兵器廃絶というテーマは,原子力産業界も思いは同じだろう。ただ,そのテーマの行程には,プルトニウムの利用という論議の分かれる問題があり,避けて通れない。その点の議論をシャープにさせるためには,資金提供してくれる相手を選ぶのに,もう少し配慮があってよかったのではないか。
あすから核兵器廃絶めざす「パクウォッシュ会議」
* 出典:『朝日新聞』1995年7月23日(日)第30面* パグウォシュ会議: 1955年,英国の哲学者バートランド・ラッセル博士と物理学者アルバート・アインシュタイン博士らが世界の科学者に向けて「核兵器が人類の存続に対する脅威となっている」と警告するラッセル=アインシュタイン宣言を出した。1957年,カナダのパグウォシュ村で第一回会議が開かれ,日本からはノーベル賞受賞者の湯川秀樹博士や朝永振一郎博士らが出席した。(いずれも故人)
第一回パグウォシュ会議の参加者たち:日本からは小川岩雄(左端),朝永振一郎(左から4人目,湯川秀樹(写真には入っていない)の物理学者3氏が出席した。
<1957年,カナダのパグウォシュ村で>
原産会議・電事連,費用を援助
科学者側:利害に絡み抵抗感ある
開催者側:ひもつきのカネと違う
核兵器と戦争の廃絶を目指して,世界各国の科学者が意見を出し合う「パグウォシュ会議」の第45回総会が,(1995年7月)24日から広島市で開かれるが,その開催費用の一部が原子力開発を進める日本原子力産業会議(原産会議,向坊隆会長)や電気事業連合会(電事連,荒木浩会長=東京電力社長)から拠出されていることがわかった。会議のグループ討議では,原発燃料のウランが燃えてできるプルトニウム利用に関するテーマもあり,研究者の間からは「利害の深い原子力産業界からの資金援助には抵抗感がある」という声も出ている。開催事務局側は「ひもつきのお金ではないので問題ない」としている。
総会は(1995年7月)24日から29日まで,広島国際会議場で開かれる。広島,長崎の被爆50年にあたることから,年次会議としては初めて日本が開催地に選ばれた。「核兵器廃絶の世界を目指して」をテーマに,約45ヵ国から200人近くの科学者が参加し,論議する。
関係者によると,同会議の日本側事務局は,昨年9月ごろから募金委員会を発足,地元自治体や財団,産業界など,幅広く呼びかけた。
総額で5,000万円程度と言われる開催費用のうち,原産会議は「2,000万程度の応援」といい,電事連は「応分の協力」としている。
今度の会議では,全体会議のほか,テーマごとに作業グループに分かれて非公開の討論が行われる。「エネルギー・環境・開発の相互関連」といった,原子力産業界の利害そのものに深くかかわってくるテーマもある。
このため,研究者の中から「商業発電から得られたプルトニウムでも核爆弾は作れる。原発関係団体からの資金援助には疑問を感じる」との声も聞かれる。
今回のパグウォシュ会議組織委員長の小沼通二・慶應大学教授は「広島会議ではプルトニウム利用の問題はテーマとして当然です。だからそういうテーマの議論は困るというようなお金はもらわない。今回はひもがついていないからもらった」と話す。
森一久(日本原子力産業会議専務理事)の話: 昨年,被爆地の広島で初めて開いた原産会議の年次大会で,核兵器廃絶を訴える「広島宣言」を出した。パグウォシュ会議への応援はそうした流れからで,問題はないと思う。
電機事業連合会広報部の話: 権威ある科学者たちの世界会議に協力しただけ。
日本平和学会元会長の岡本三夫氏(広島修道大学教授)の話: 核兵器廃絶というテーマは,原子力産業界も思いは同じだろう。ただ,そのテーマの行程には,プルトニウムの利用という論議の分かれる問題があり,避けて通れない。その点の議論をシャープにさせるためには,資金提供してくれる相手を選ぶのに,もう少し配慮があってよかったのではないか。