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宮本盛太郎『来日したイギリス人-ウェッブ夫妻、ディキンスン、バートランド・ラッセル』

(木鐸社、1989年3月、210 pp.)


あとがき (1988年5月

 以上で,三組の人物についての史料紹介を終わる、さらに,三組の人物のイギリスにおける関係,三組の人びとの中国観と日本観との関係(この際、とくに帝国主義観が問題となる)が解決さるべき課題として、前途にあることになろう。そこで、本書は、単に一つの基礎的課題を解決したにすぎないものであることは明らかである。ただ、ウェッブ夫妻とG.L.ディキンスンについては、一般には(特別な専門家を除いて)、来日したことすら知られておらず、単なる史料紹介にすぎない本書のようなものも、一応一つの存在意義はあるものと思われる。読者の忍耐と御海容を乞う次第である。
 本書の史料を入手するについて、つぎの方々にお世話になった。記して感謝の意を表する。高橋友二郎氏、服部平治氏、ジャネット・ハンター博士、中村宏氏、片山裕氏、片山雅義氏、吉原明子さん。
 この拙い書を、畏友・竹山護夫氏に捧げる。同氏の計報が筆者のもとに屈いたのは、琵琶湖に美しい白い雪が音もなく降りそそぐ寒い日だった。この日の衝撃を、生涯忘れることができないであろう。竹山氏は、筆者とは質的に異なるすぐれた才能の持ち主だった。氏のみごとな分析力に感嘆した体験をお持ちの読者もおられると思う。氏と共に、古書店回りをした若き日の思い出を初め、多くの思い出が、次から次へと脳裏に浮ぶ。幽囲境を異にした竹山護夫氏に対しては、「故・竹山護夫氏に捧ぐ」、とするのが普通の例である。だが、筆者は、「故」を断じて拒否する。氏は、筆者の内で生きておられ、今後も生き続けられるのだから・・・。
 本書を出版するについて、いつも御高配を賜わっている木鐸社の能島豊、坂口節子、犬塚満の三氏に今回もお世話になった。心から御礼申し上げる。
 一九八八年五月 宮本盛太郎