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ラッセル=シュヴァイツァー_往復書簡 n.24 (1963.05.20)

* 出典:『シュワイツァー研究』n.11(シュワイツァー日本友の会、1982年9月)pp.51-52
往復書簡・索引

 一九六三年五月二十日
 プラス・ペンリン
  バートランド・ラッセル

 ガボン、ラムバレネ
 A.シュワイツァー様

 親愛なるシュワイツァー博士、
 私はいま、中東におけるロケットと核兵器の競争の急速な進展に深い関心と心配をいだきながらこれを書いています。エジプトとイスラエルが所有する原子炉、中東におけるロケット技術の導入、そして双方ともいつまでも紛争解決の手段をみいだせない無力さというものが、当地方のひいては世界の平和にとって大へん大きな危険を暗示しており、近いうちにそれは危機に瀕するかも知れません。
 私は過去一か月間に九人の中東の元首たちに個人的に手紙を書いて、イスラエルとアラブ世界以外のなんらかの権威によってすべての配備計画と核工場の軍備縮小を査察してもらうことに同意するように訴えました。まだ一通も真剣な返事を得ていません。それゆえ時間の許すかぎり、公衆に訴えることをいまやらねばと気づかっています。そこで同封のアピールに署名して頂けるだろうと希望してこの手紙を書いています。このアピールは、あなたのようにすぐれた科学者や知識人たちから、また平和のために働いているすぐれた人たちから相当数の署名を確保した上で公表したい。あなたがこのアピールに賛同して下さることを心からお待ちします。

ラッセルの言葉366

 心からの願いと敬意をもって
 敬 具
  バートランド・ラッセル

 中東におけるロケット爆弾と核兵器についての報道に関連する公衆へのアピールにラッセルがシュワィツァーの署名を求めたことは、今までのところ、どのラッセルの伝記でもふれていないようだ。シュワィツァーの返事に同封された筈のアピールの原文が見当らないのは、彼が署名して送り返したことによるのであろう。