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『アインシュタイン=ボルン往復書簡集:1916-1955』へのラッセルの序文

* 出典:『アインシュタイン=ボルン往復書簡集:1916-1955』(西義之(訳) 三修社,1977年)
* 原著:Albert Einstein - Hedwig und Max Born Briefwechsel 1916-1955 (Munchen; Nymphenburger Verlagshandlung, 1969)

「ラッセルの序文」(1968年12月1日執筆=ラッセル96歳)


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 アルベルト・アインシュタインとマックス・ボルンの往復書簡は、自然科学者のみならず、広く一般読者の間に大きな反響を呼ぶであろう。両氏は今世紀のもっとも偉大な自然科学者に数えられ、その関心領域は多面的で、科学者としての社会的責任の自覚にも尋常ならぬものがあった。ここに集められた明らかに出版を意図せぬ書簡は、戦時は戦時、平時は平時で、両氏が抱いた希望と不安、己れや同僚の研究の進捗に寄せたプライベートな思い、さらに自然科学史にとり 測り知れぬ価値を持つ、多くの資料を伝えてくれる。
 また両氏の崇高な人生のなにがしかも明らかになっている。私は両氏の交友を長年にわたって見聞することができた。両氏はまこと天与の才に恵まれ、慎しみ深く、公けに口にするところは断固たる勇気に溢れていた。矮小(わいしょう)なる倫理の持主が群れる凡庸な時世においては、両氏の人生の放つ光はことのほか美しい。この光のなにがしかは書簡にも含まれており、これが出版されることで、世界はその豊かさを増すであろう。