A.J.エイヤー(著)、吉田夏彦(訳)『ラッセル』へのはしがき
* 出典:A.J.エイヤー(著)、吉田夏彦(訳)『ラッセル』(岩波書店,1980年1月刊 vii,209pp. 19cm./岩波現代選書 n.41)* 原著:Russell, by A. J. Ayer, 1972.
はしがき
この本では、比較的手短に、バートランド・ラッセルの生涯の主なできごとについてのべ、また、専門家ではない人達にもわかるかたちで、彼の哲学の全体について解説しようとした。技術的な問題にたちいることはあえて避けなかったが、専門的な術語をつかうことはできるだけひかえ、やむをえず使った時には、その意味を説明しておいた。ラッセルの哲学のより技術的な面にふれる時には、拙著『ラッセルとムーア――分析的伝統』(Russell and Moore: the analytical heritage)を、かなり自由に利用した。この本は1971年、イギリスではマクミラン社、アメリカではハーヴァード大学出版部から刊行されたものである。このように拙著を使うことを許していただいたことについて、この両出版社に感謝しなくてはならない。1971年刊のこの書物を読んでしまっている読者には、今度の本にあらわれる重複についておわび申し上げる。しかし、すでにできるだけ明確に書いておいたことを、今回、もう1度書き直すということは、馬鹿げたことに思えたのである。
原稿をタイプし、印刷にまわす準備を助けて下さったギダ・クロリ夫人(Mrs. Guida Crowley)に、このたびも、お礼申し上げる。
1971年9月23日
10 Regents Park Terrace, London, NW1