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バートランド・ラッセル『人類に未来はあるか』(邦訳書)第1章 - 冒頭

* 出典:バートランド・ラッセル(著),日高一輝(訳)『人類に未来はあるか』(理想社,1962年6月. 188pp.)
* 原著:Has Man a Future?, 1960

第1章 プロローグあるいはエピローグ


Chap. 1 Prologue or Epilogue*1

「人間,別名'ホモ・サピエンス(知性あるもの)',―これは人間が自らをいくらか尊大ぶって呼んだものであるが―は,この地球上の動物類のうちで最も興味があり,またもっともしゃくにさわる存在である。」
 これは,哲学に通じた火星人の生物学者が,われわれの植物群と動物群について書くレポートの最後の章の最初の文であり得よう。これと深い関係をもっている(当事者である)われわれにとっては,感情的にも本能的にも――われわれみんながそうであるのだが――地球外の世界からの訪問者にはごくあたりまえのことであるところの,公平ではばのある見方をするということが実にむずかしいのである。しかしながら,時折,われわれが想像する火星人がするような眺め方をすること,そしてこのような熟視の光に照らして,人類の過去と現在を評価し,未来を(もし未来があるとすれば)見積もり,さらに,人類がその地上での一生に対して,(よかれあしかれ←日高訳では抜けています。)いままでふるまってきた,今ふるまいつつある,今後ふるうであろうこと,また将来,地球外で営む一生(多分そうなるだろうが)に対して為すであろうこと(それが善であれ悪であれ)について価値評価する,ということは有益なことである。このような調査において,一時的な情熱というもの重要でなくなる――それはちょうど,小さい丘は,飛行機上から見ると平らに見えるが,永遠に重要性のあるものは,(地上にはりついて)より制限された視界でみるより,より目立って見えるようなものである。


'Man, or homo sapiens, as he somewhat arrogantly calls himself, is the most interesting, and also the most irritating, of animal species on the planet Earth.'
This might be the first sentence of the last chapter of a report on our flora and fauna by a philosophic Martian biologist. For us, deeply involved, as we all are, both emotionally and instinctively, it is difficult to achieve the impartiality and the breadth of outlook which would be natural to a visitor from another world. But it is useful, from time to time, to attempt such a contemplation as that of our supposed Martian, and in the light of this contemplation to assess the past, the present, and the future (if any) of our species, and the value, for good or evil, of what Man has done, is doing, and may do hereafter, to life on earth, and perhaps, in the future, to life elsewhere. In this kind of survey, temporary passions lose their importance, as small hills look flat from an aeroplane, whereas what is of permanent importance stands out more boldly than in a more restricted view.

*1 Further treatment of a theme that I have dealt with under the same title in Human society in Ethics and Politics. (London: George Auen & Unwin Ltd.)
1984年3月18日に松下宅で開催された,第45回「ラッセルを読む会」案内状より