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『バートランド・ラッセルは語る』訳者(東宮隆)あとがき

* 出典:バートランド・ラッセル(著),東宮隆(訳)『ラッセルは語る』(みすず書房,1964年5月 183pp.(みすず叢書n.4)
* 原著:Bertrand Russell Speaks His Mind, 1960


 本書の特徴はやはり対話形式の自然さにあると言えるであろう。この対話の13のテーマは大部分がラッセルの著作のいずれかのテーマであり、ラッセルの夙に(つとに)考えぬいた主題であるとはいえ、本書に展開されている質疑応答は、その辛辣さからも、そのずけずけとした不遠慮さからも、その多方面さからも、その機智からも、天衣無縫の趣きをそなえている。本対話で、ラッセルは、狂信主義や産児制限や水爆や人類の将来など、各般の問題を俎上にのせ、持前の懐疑に希望をまじえながら、偏見と不寛容を告発して倦むところを知らないようである。しかし・欲を言えば、もっと自由に、場合によっては、もっと不躾けに、問題が選ばれていたら、さらに一層思い切った語りかたをするラッセルの姿に接することができたのではないかという気がしてならない。
  1964年3月 東宮隆