バートランド・ラッセル『神秘主義と論理』第1章「神秘主義と論理」n.1
* 出典:バートランド・ラッセルv,江森巳之助(訳)『神秘主義と論理』(みすず書房,1959年。276+ii pp.)* 原著: Mysticism and Logic, 1918)
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(写真は、本書を出版した1918年のラッセル:Garsington Mannor にて) 形而上学、すなわち全体としての世界を思惟によって把握しようとする試みは、その発生の始めから、2つの全く相異なる人間的衝動の結合と闘争とによって、発展せしめられて来た。その1つは神秘主義の方向へ、他の1つは科学の方向へ、人間を押しやろうとするのである。ある人々は、この2つの衝動の一方だけの力で、他の人々はもう1つの衝動だけで盛名を馳せえた。たとえば、ヒュームにあっては科学的衝動だけが妨げるものもなく支配的であるのに対して、ブレイクにあっては科学に対する強い敵対心と深遠な神秘的洞察とが同居している。しかし、古来哲学者として最高級に位する人々は、科学と神秘主義との両方の必要を感じている。それというのも、この2つを調和させる試みこそは、彼らの全生涯そのものであったのだし、またそうすることによって、哲学を--どこまで行っても不確実であるにせよ--科学、宗教のいずれよりも偉大なものであると、人々に常に思わせておかなければならなかったからである。 科学的衝動および神秘的衝動の明瞭な特徴づけをする前に、この2つを分ち難く混ぜ合せたことによって盛名を馳せた、2人の哲学者を例に採って説明したい。その2人とは、ヘラクレイトスとプラトンである。・・・。 |
Before attempting an explicit characterization of the scientific and the mystical impulses, I will illustrate them by examples from two philosophers whose greatnes lies in the very intimate blending which they achieved. The two philosophies I mean are Heraclitus and Plato. ... |