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バートランド・ラッセル(著),市井三郎(訳)『社会改造の原理』
(河出書房新社版『世界の大思想』v.26,1969年8月刊。pp.1-155.)

(原著: Principles fo Social Reconstrucition, 1916)
原著まえがき(1916年9月)
Preface to Principles of Social
Reconstruction, 1916

(右の写真は、ラッセルが本講演を行ったロンドンの Caxton Hall)

 以下の諸講演は、その草稿を1915年に書き、実際に講演したのは1916年の始めだった。講演するまえから、わたしはその草稿を少なからず書き直して、主題に少しでもふさわしいものにしたいと願っていた。ところが、もっと緊急を要するように思える他の仕事が起こってきて、思う存分に草稿に加筆できる機会は、今なお当分やってきそうにもない。(松下注:1914年7月28日、第一次世界大戦勃発/8月4日、英国、宣戦布告。群衆が英国の参戦に歓呼の声をあげている姿を目撃してラッセルは、ショックを受ける。11月、反戦運動開始。)
 本書の意図するところは、人々の生活を形成するに当って、意識的な目的よりは衝動というものが、より大きい影響を及ぼすという信念に基づいた、ある政治哲学を提示することにある。さまざまな衝動のうち大部分のものは、所有衝動と創造衝動との二群に大別することができよう。前者に属する衝動は、他人と共有することができない何物かを獲得、あるいは保持することを目指すものであり、後者に属する衝動は、知識とか芸術、善意といったように、私的に所有することなどのない価値ある何物かを世界にもたらすことを目指している。最良の生活とは、その大部分がさまざまな創造衝動に基づいて築かれた生活であり、最悪の生活とは、その大部分が所有欲に発しているような生活である、とわたしは考える。政治的諸制度は、男性や女性の気質に多大な影響を及ぼすものであり、したがってそれは、人々の所有欲を減殺して創造性を喚起するような制度でなければならない。国家、戦争、財産といったものは、所有衝動が政治的に具体化した主たるものであり、教育・結婚、宗教といったものは、現在では創造衝動をはなはだ不適切にしか具現していないが、あるべき姿においては創造衝動を具体化したものとならねばならない。創造性を解き放つこと、それこそ政治と経済の双方における改革原理となるべきである。本書の諸講演を執筆するにいたったのは、その確信からであった。
・・・。
The following lectures were written in 1915, and delivered in the beginning of 1916. I had hoped to re-write them considerably, and make them somewhat less inadequate to their theme; but other work which seemed more pressing intervened, and the prospect of opportunity for leisurely revision remains remote.
My aim is to suggest a philosophy of politics based upon the belief that impulse has more effect than conscious purpose in moulding men's lives. Most impulses may be divided into two groups, the possessive and the creative, according as they aim at acquiring or retaining something that cannot be shared, or at bringing into the world some valuable thing, such as knowledge or art or goodwill, in which there is no private property. I consider the best life that which is most built on creative impulses, and the worst that which is most inspired by love of possession. Political institutions have a very great influence upon the dispositions of men and women, and should be such as to promote creativeness at the expense of possessiveness. The State, war, and property are the chief political embodiments of the possessive impulses; education, marriage, and religion ought to embody the creative impulses, though at present they do so very inadequately. Liberation of creativeness ought to be the principle of reform both in politics and in economics. It is this conviction which has Ied to the writing of these lectures.