バートランド・ラッセル(著),岡本賢吾・戸田山和久・加地大介(共訳)『プリンキピア・マテマティカ序論』への訳者あとがき
* 出典:バートランド・ラッセル(著),岡本賢吾・戸田山和久・加地大介(共訳)『プリンキピア・マテマティカ序論』(哲学書房,1988年7月刊。 350pp.)* 原著:Principia Mathematica, 3 vols., 1910-1912.
訳者あとがき
本文の翻訳の分担は、次のように細分化されたものとなっている。
(1)「はじめに」+「第一章」。原文をほぼ3等分し、はじめから順に、岡本・加地・戸田山が担当した。
(2)「第二章」。原文をほぼ6等分し、はじめから順に、加地・戸田山・岡本・岡本・加地・戸田山が担当した。
(3)「第三章」。原文をほぼ3等分し、はじめから順に、加地・岡本・戸田山が担当した。合計すれば、3者の担当部分はそれぞれほぼ等量である。ただし、各自の訳稿はいずれも数度にわたって共同で検討し、内容上の解釈はもちろん、表現上の問題も含めて、3者の合意が得られるような形にまで推敲を行なった。この意味でむしろ、全文にわたって、3者が共同して責任を負うべきものとなっている。
なお、訳者解説の分担については、解説の最後を参照されたい。原文の解釈や訳語の選択などについて、できる限りの努力を払いはしたが、いまだ不十分な点も多いかと惧れる。訳者解説の内容についても同様である。読者各位の御検討・御批評をお願いする次第である。
元来この翻訳は、訳者3名が共同して始めた数学基礎論の読書会で、『プリンキピア・マテマティカ』をテキストとして取り上げたことに端を発している。数理論理学上の古典的著作から、現代的哲学の新たな可能性を探るための指針を得たいという我々の願いに対して、本書『プリンキピア・マテマティカ』は、その重厚なスタイルと鋭利なアイデアとによって、十分という以上に豊かに応えてくれる著作であった。さらにその一部を訳出する機会にまで恵まれたのは、我々にとって望外の幸いだったと言う以外にない。
本書が成立する運びとなったのは、そのそもそもの発端から最終的な完成に到るまで、ひとえに中野幹隆氏の熱意と努力のおかげである。ここに改めて訳者一同より、氏の深い見識への敬愛と共感の念を込めつつ、心より御礼を申し述べさせていただきたい。