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バートランド・ラッセル「記号論理学」

* 原著: Principia Mathematica, v1, 1910
* 出典:牧野力(編/訳)『ラッセル思想辞典



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 以下は藤川吉美氏(当時成蹊大学講師)による説明ですので英文はありません。

 これは「数学的論理学」ないし「数理論理学」(mathematical logic) とも呼ばれ。アリストテレス以来の「伝統的論理学」(いわゆる三段論法、syllogism)は、大前提と小前提とから一つの結論を導出する際の正しい推論の型を体系化するにとどまったが、記号論理学はそうした制限を排し、数学的演算の方法を用いて命題間の関係を明確にするのみならず、命題自体の論理的構造を分析することに成功した。
 ホワイトヘッド(A. N . Whitehead, 1861-1947) によれば、数学と同様、記号論理学に 「算術」の段階、 「代数学」の段階、「一段開数論」の段階、および「解析学」の段階、といった四段階が認められる
 一方、論理的対象の視点からすれば、記号論理学は「命題論理学」(propositional logic)と「述語論理学」 (predicate logic) とに大別される。クワインは後者を「量化理論」(quantification theory) と呼んでいる。しかし、いずれもわずかの基本概念(無定義語)と基本命題(公理)から 「推論規則」(rule of inference) によって機械的に恒真式が導出できるように体系化されるばかりか、「集合論理」(logic of set)および「開係論理」 (logic of relation) 、さらには「様相論理」 (modal logic)までも記号論理に含められ、論理学の領域は拡大されている。歴史的にみ て「記号論理学」はプール(G. Boole, 1815-1861)、フレーゲ (G, Frege, 1848-1925)についで、ホワイトヘッド、ラッセルの共著『数学原理』(Principia Mathematica, Vol. I-II, 1910-1913)において完成された。記号論理学はヒルベルト (D. Hilbert, 1862-1943)によって数学基礎論(foundation of mathematics) として継承発展されたが、カルナップ (R. Carnap, 1891-1970) を中心とするウィーン学団および、タルスキー (A. Tarski, 1901-1983)を中心とする「ポーランド学派」 においては、哲学的分析に必要な基礎的方法論として重視され、展開されるに至った。(→ 「論理実証主義」参照)(藤川)