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バートランド・ラッセル「含意理論(The Theory of Implication)」

* 原著: Principia Mathematica, v.1, 1910
* 出典:牧野力(編/著)『ラッセル思想辞典


 以下は、藤川吉美 氏(故人/当時・成蹊大学講師。東工大助教授を経て、九州女子大学学長)によるオリジナルな日本語の記述ですので、英文はありません。


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 ラッセルは「論理学」(logic) を「含意理論」と考え(注:「含意」(implication)とは、前提命題Aから論理的な帰結として命題Bが成り立つ場合の、AとBとの形式的関係を言い、この場合「AがBを含意する」と言う。)、それにはクラス要素、クラス包含関係、同一性、ある種の関係理論を含むものとみなしていた。つまり、ラッセルにとって論理学とは、すべての数学が究極的にそこへ 還元されるところの基礎論であったが、彼は「含意」 (implication)を「推論」(inference) から区別することの 重要性を指摘し(Introduction to Mathematical Philosophys, 1919, section 14 参照) 、伝統的論理学で主題とされた概念、判断、推論ではなく、「含意の理論」であることを強調した。「論理学」が推論と関係するのは、実在の世界における推論の「正当化」(justification)においてであり、これが含意であり、また、含意によって推論の正当性は保証されるのである。「p は q を含意する」(p implies q)、つまり(p ならば q)は、p が真であることから、q が真であることを推論する関係である。この命題は「p でないか、それとも q である」(~q∨q)を 意味している。したがって、この命題は p が偽であるか、それとも、q が 真であるとき真となり、p が真で q が偽 であるとき偽となる。(藤川)