バートランド・ラッセル「衝動と欲望」
* 原著: Principles of Social Reconstruction, 1916, chap.1* 出典ん:牧野力(編)『ラッセル思想辞典』所収
人間の活動は衝動と欲望の二つから生れる。従来の政治哲学は欲望説に基づいていた。
欲望はより意識的、顕在的で、文明化された行動の一部分だけを支配するに過ぎない。
人間は、本性のより一層本能的な部分においては、目的追求の欲望ではなく、ある活動に向かう衝動に支配されている。情熱だけが情熱を統御でき、逆方向の衝動か欲望だけが、衝動を抑制できる。人間を突き動かすものは直接的な衝動だけで、欲望は衝動を包み、衝動に奉仕する外衣にすぎない。
衝動は生命力の現れで、移り気で、無秩序で、本質的には盲目的である。旺盛な生活者には、他人の眼には不合理と映る強い衝動がある。戦争、科学、芸術、恋愛などの源泉に衝動がある。
衝動は当人の生活環境や生活様式で大幅に変る。この変化の性質を研究すべきで、それが政治や社会制度の効用や弊害を判断する上で必要かつ不可欠なことである。
* 挿絵出典:Bertrand Russell's The Good Citizen's Alphabet,1954)
All human activity springs from two sources : impulse and desire. ... All this is familiar and politifal philosopy hitherto has been almost entirey based upon desire as the source of human actions. ...
But desire governs no more than a part of human activity, and that not the most important but only the more conscious, explicit, and civilized part.
In all the more instinctive part of our nature we are dominated by impulses to certain kinds of activity, not by desires for certsain ends.
... Only passion can control passion, and only a contrary impulse or desire can check impulse.