(本館へ)  (トップへ)  (分館へ)

バートランド・ラッセルのポータルサイト


(語学テキスト)佐山栄太郎(編)『訳注ラッセル選』(南雲堂,1960年7月刊)pp.60-61. 目次

Satan finds some mischief still for idle hands to do

怠け者には,悪魔が・・・
Like most of my generation,*1 I was brought up*2 on*3 the saying: 'Satan finds some mischief still for idle hands to do.'*4 Being a highly virtuous*5 child, I believed all that I was told, and acquired a conscience which has kept me working hard down to the present moment.*6 But although my conscience has controlled my actions, my opinions have undergone a revolution.*7 I think that there is far too much work done in the world, that immense harm is caused by the belief that work is virtuous, and that what needs to be preached in modern industrial countries is quite different from what always has been preached. Everyone knows the story of the traveller in Naples*8 who saw twelve beggars lying in the sun (it was before the days of Mussolini),*9 and offered a lira*10 to the laziest of them. Eleven of them jumped to claim it, so he gave it to the twelfth. This traveller was on the right lines.*11 But in countries which do not enjoy Mediterranean*12 sunshine idleness is more difficult, and a great public propaganda will be required to inaugurate*13 it.

(From: In Praise of Idleness and Other Essays, 1935)

【ヒント】
 勤勉の徳を教えこまれて育った著者は,忠実に勤勉な生活をして来たが,はたして仕事ばかりしていることがよいことかと,疑念を抱く。現代では奨励すべきことはむしろ怠惰ではないか。その怠惰奨励の笑話があるが,これは諸君の誰にも解るだろう。初めの方に出ている諺は,日本の諺のどれに当るか。
【語句】
*1 generation= a11 persons born about the same time.「世代の人々」
*2 be brought up「育てられる」「教育される」
*3 「基ずいて」
*4 Satan finds some mischief still for idle hands to do「悪魔は常に,なにもしていない者には何か悪い仕事を見つけてくれる」 ここの still は always の意味。日本の格言なら「小人閑居して不善をなす」に当るだろう。
*5 highly virtuous「非常によく道徳を守る」
*6 down to the present moment「今の今まで」
*7 undergo a revolution「大変化を来たす」 この連語を利用すること。
*8 Naples[neiplz]ナポリ。
*9 Mussolini[musli:ni] 1883-1945),1922年から1943年まで独裁首相。
*10 lira[1i:r]リラ: イタリアの貨幣。
*11 on the right lines の 1ine は a course of action, a way of thinking, behaving or dealing with a situation と説明されている。be on the right lines は「正しい方針である」「処置が当を得ている」など,いろいろに訳せる。
*12 Mediterranean[meditreinin]「地中海の」
*13 inaugrate「正式に紹介する」「正式に認める」


【構文】
Being a highIy virtuous child は As I was ... と書き替えられる。I think that there is far too much ... の文では think の目的は,ほかに that immense harm ... の節と,that what needs ...の節もある。
【邦訳】
 私の世代の大部分の人たちと同じく,私も「悪魔は常に,何もしないでいる人間の手に悪い仕事を授ける」(「小人閑居して不善をなす」)という格言に基づいて育てられた。大へん道徳的な子供であったので,私は教えられたことはなんでも信じて,現在に至るまで私に孜々(しし)として働き続けさせた良心を身につけた。しかしながら,私の良心はわたしの行動は支配したけれども,わたしの意見の方は大きな変化を来たした。私の考えでは世の中では,余りにも仕事をやりすぎる。莫大な害は,勤労は道徳であるという信念によって起されている。そして,現代の産業化された諸国では必要な教訓は従来説かれて来たものとは全く違ったものである。
 ナポリの一旅行者のあの話は誰も知っているが,この人は日向(ひなた)に寝ころんでいる12人の乞食を見て(これはムッソリーニ時代以前のこと),一番の怠け者に1リラやろうと言った。11人がそれはおれが貰うと跳び起きた,そこで旅人は12番目の(起き上らなかった)者にお金をくれたのだ。この旅行者の考え方は当を得ていたのだ。けれども地中海の陽光を楽しめない国々では,無為ということはもっと難しい。そこで,この無為の徳を世に行わせるには大規模な宣伝活動が必要である。 (右イラスト:第34回「ラッセルを読む会」案内状より)

(参考)西野仁「ストレス・マネジメント」より引用(←注:リンク切れになっています!)
「・・・。イギリスの思想家バートランド・ラッセルは1935年,『怠惰への讃歌』(角川書店)で,ひまを賢明に使う趣味の重要性を説き,「機械ができない前と同じように目いっぱい働いているが,そんな愚かなことはもう止めて,もっと賢くなろうよ」と提案しています。まさにそうだと思います。」
(参考)飯泉仁(いいずみまさし)氏「『スロー・イズ・ビューティフル』(辻信一著)について」より引用
「・・・。スローに生きようという考え方は,これまでマイナスイメージでとらえられていた,それを逆転して,怠けるとか,疲れたから休むとか,ぶらぶらするとか,遊ぶとか,そういうことを大事しよう,というのが本書の主張である。この考えには先駆者がいる。バートランド・ラッセルは「怠惰への賛歌」を書いた。・・・。」